
埼玉県
県庁所在地:さいたま市
埼玉県の食文化は、武蔵野の畑作地帯と利根川・荒川流域の水田地帯が交わる「関東の台所」としての底力が根幹にある。全国2位のうどん生産量を誇る「うどん王国」の名にふさわしく、煮ぼうとうやひもかわ、冷や汁など、幅広麺とつけ汁の文化が県内各地で脈々と受け継がれている。秩父の山間部ではみそポテトやかてめし、おなめといった保存食・腹持ちの良い食が、厳しい自然と向き合う知恵として育まれてきた。
これらの料理に共通するのは、農耕・養蚕・機織りなどの労働の合間を縫って食べる「小昼飯」の文化である。つみっこやたらし焼き、飯餅は手間を省き、畑や工場ですぐに食べられるよう工夫された。行田のゼリーフライやフライは、足袋工場の女工たちの腹ごしらえから生まれたソウルフードであり、工業化の波の中でも食文化は新たな形を取った。ハレとケの境界が曖昧で、日常の労働食がそのまま郷土料理として残るのが、埼玉の食の特徴といえる。
埼玉県の定番名物
埼玉県の名物一覧

やきとり
鶏肉ではなく豚のカシラ肉を使う東松山市名物。かつて工場労働者の腹ごしらえとして親しまれ、今も赤提灯の店で味わえる。店ごとに異なる味噌だれが個性を彩る。

みそポテト
秩父の農家で「小昼飯」として親しまれた焼き芋風の郷土料理が、B級グルメ王決定戦優勝で脚光を浴びた。ホクホクのジャガイモに甘辛い味噌だれが絡む、畑作地帯ならではの知恵の味。

煮ぼうとう/ひもかわ
埼玉県を代表する幅広麺の煮込み料理。渋沢栄一が愛した「煮ぼうとう」は、毎年11月11日の命日に「にぼうと会」で供され、地元の食文化を今に伝える。

栗の渋皮煮
砂糖をふんだんに使う贅沢な味わいが特徴。かつてはお祭りやお祝い事にしか食べられなかった、日高市の栗文化が詰まった保存食である。

くわいの含め煮
慈母が乳を授ける姿に似た芽の形から「子孫繁栄」の縁起物とされ、お正月のおせちに欠かせない「くわいの含め煮」。くちなしの実で鮮やかな黄色に染める埼玉の伝統料理である。

ゼリーフライ
「銭フライ」がなまって「ゼリーフライ」となった小判型の揚げ物。おからとジャガイモを主材に、ウスターソースの味付けとモチモチ食感が特徴の行田市民のソウルフードである。

つみっこ
「つみとる」という本庄地方の方言が名前の由来。小麦粉の生地を手でちぎって鍋に入れる手軽さから、養蚕や機織りの合間に重宝された埼玉の郷土料理。

ゆず巻き
大根にゆずの皮を巻き込んだ埼玉の漬物。正月料理として愛される一方、酒の肴やお茶請けにもなる保存食で、甘酢や三杯酢に漬け込む家庭ごとの違いがある。

聖天ずし
江戸時代から変わらぬ姿で受け継がれる、熊谷・妻沼のハレの日の味。大きな油揚げに酢飯を詰めた稲荷ずし3本と巻きずし4切れのボリュームが、農作業の合間の腹持ちの良さとして親しまれてきた。

小麦まんじゅう
埼玉県の七夕やお盆に供える、ふんわり柔らかな小麦粉生地の蒸しまんじゅう。所沢の「ゆでまんじゅう」と対をなす、シンプルながら深い味わいの郷土菓子である。

こんにゃくのみそおでん
生のこんにゃく芋を手作りした三角形のこんにゃくに、ごまやゆずを混ぜたみそだれを付けて食べる秩父・寄居の名物。熱々の串揚げスタイルで、子どものおやつから観光客の味わいまで幅広く親しまれる。

かてめし
醤油を使うハレの日の飯物として、五目ちらしよりも重宝されたという秩父の名物料理。米のかさを増やす工夫から生まれた庶民の知恵が、現代も家庭で受け継がれる。

甘露梅
関東三大梅林の一つ・越生梅林の「べに梅」を使い、青梅を赤ジソで包んで砂糖漬けにする甘露梅。南北朝時代に太宰府から伝わった梅の里の伝統菓子である。

フライ
「フライ」とは揚げ物ではなく焼き物だ。昭和初期、足袋工場の女工たちに大ヒットした行田の名物で、名前の由来には「布来(ふらい)」説など諸説ある。

いがまんじゅう
赤飯が栗のイガのようにまんじゅうを覆う、埼玉県北東部の縁起菓子。甘じょっぱい味わいともっちり食感が意外な調和を生み、ハレの日に親しまれてきた。

埼玉のうどん
全国2位の生産量を誇る「うどん王国」埼玉。かつてはどの地域でも単に「うどん」と呼ばれていたが、北東部の喉ごしの良い麺、西部の茶色がかったつけ汁麺、中央部の幅広麺など、20種類以上のバリエーションが存在する。

うでまんじゅう
「ゆでまんじゅう」がなまって「うでまんじゅう」となった埼玉県所沢市の郷土菓子。蒸すのではなくたっぷりのお湯でゆでることで、もっちりとした独特の食感が生まれる。

おなめ
麦こうじと大豆を発酵させた「おなめ」は、半年以上日持ちする保存食として秩父地域で愛されてきた。塩気の強い味わいが夏の食欲をそそる、ご飯のお供の定番である。

塩あんびん
砂糖が高価だった江戸時代、庶民が生み出した知恵の菓子。塩味のあんをもちで包んだ「塩あんびん」は、埼玉県北部・東部で新米収穫や子どもの成長祝いに欠かせないハレの日の味である。

ねぎぬた
埼玉・深谷の祝い料理「ねぎぬた」は、酢味噌と絡む冬ネギのとろける甘みが格別。かつては「もうすぐお開き」の合図として配られた縁起物である。

冷や汁/すったて
「すったて」とは、野菜をすりばちですりたてを食べていたことに由来する。四方を川に囲まれた川島町で稲作の農家に親しまれ、夏の農繁期に手間なく栄養を補給できるうどんのつけ汁として重宝された。

どじょう煮
田んぼのじょうを手ですくって捕獲し、丸ごと煮付けた滋養強壮の味。骨も頭も食べられる「丸鍋」は、埼玉県東部の川の恵みを丸ごと味わう知恵である。

たらし焼き
生地をたらして焼くことから名付けられた埼玉の小昼飯。うどんほど手間がかからず、畑仕事の合間に重宝された小麦粉のおやつである。

呉汁
田んぼのあぜで育てた「たのくろ豆」をすりつぶした大豆の滋味深い汁物。ご飯にかけて食べる質素な食べ方も、古き埼玉の暮らしを今に伝える。

八ツ頭の茎の炒め煮
「血の道の薬」と呼ばれた八ツ頭の茎は、干して保存した「芋がら」を炒め煮にした埼玉の知恵料理。ごはんのおかずにも酒のつまみにもなるしっかりとした味わいが特徴である。

ねじ/小豆ぼうとう
秩父の「ねじ」は、螺旋状にねじった短いうどんに小豆あんを絡めた名物。貧しかった時代に餅の代わりとして生まれたという説があり、8月16日の送り盆に食べられる。

つとっこ
栃の葉に包んだ武士の携帯食が、秩父の新緑の季節を告げる5月の節句の行事食へと姿を変えた。もち米と小豆を包み、わらで縛って炊く古の知恵が今も息づく。

すみつかれ
節分の豆を残して使う北埼玉の知恵料理。鬼おろしで粗くおろしたダイコンと炒り大豆を煮込み、初午の日にお稲荷様に供える冬の保存食である。

飯餅
残り飯を水でといた小麦粉と混ぜて焼く、埼玉県内で呼び名が異なる農家の知恵料理。かつては田んぼまで持ち運べるお弁当代わりとして重宝された。
カテゴリ
埼玉県の食文化
埼玉県の地形は、西部の秩父山地から中央部の台地、東部の低地へと急激に変化する。この多様な地形が、稲作と畑作の混在する農業形態を生み出した。江戸時代、日光街道・中山道・奥州街道が交わる宿場町が点在し、江戸への年貢米や物資の集積地として発達した。特に川越は「小江戸」と呼ばれ、蔵造りの街並みに象徴されるように、食文化にも関東の中心地としての重みが宿っている。
明治以降、県南部の行田を中心に足袋産業が隆盛を迎え、工場労働者の大量の腹ごしらえを支える大衆食が生まれた。ゼリーフライやフライは、その典型である。一方、秩父地方は山深く交通の便が悪かったため、保存食の知恵が特に発達した。おなめやつとっこ、ねじなどは、長期保存を可能にする発酵や乾燥の技術が結実したものである。こうした地理的条件と歴史的背景が、埼玉県内に多様な食文化の層を形成した。
気候的には内陸性が強く、夏は酷暑、冬は乾燥して冷え込む。このため、夏には冷や汁のような冷たい麺文化、冬には煮ぼうとうのような熱々の煮込み料理が発達した。くわいの含め煮やゆず巻きなど、お正月を中心とした冬の行事食も豊富である。こうした季節感の鋭さが、埼玉の食文化に奥行きを与えている。
よくある質問
- 秩父でお土産に買える名物は?
- みそポテトが代表的である。ホクホクのジャガイモに甘辛い味噌だれが絡む、畑作地帯ならではの味わいである。真空パックのものもあり、手軽に持ち帰れる。
- 埼玉で子どもでも食べやすい名物は?
- ゼリーフライがおすすめである。おからとジャガイモを主材にした揚げ物で、ウスターソースの味付けとモチモチ食感が子どもの口にも合う。行田市のソウルフードとして広く親しまれている。
- 埼玉の名物でお取り寄せできるものは?
- 煮ぼうとうやひもかわの生麺とスープのセットが通販されていることが多い。幅広麺のもちもちとした食感は、家庭の鍋でも再現できる。
- 埼玉の名物でふるさと納税の返礼品にあるものは?
- 秩父のおなめや、日高市の栗の渋皮煮などが返礼品として登録されていることがある。半年以上日持ちするおなめは、保存食としても重宝する。