
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
「塩あんびん」は、小豆やもち米の自然な甘みを塩が引き立てる、やや平たい丸形の餅菓子である。埼玉県北部から東部にかけての久喜市、加須市、行田市周辺は、古くからもち米の産地として知られ、豊かな収穫を祝う食文化が育まれた。新米の収穫時や桃の節句、端午の節句、初誕生日など、人生の節目と稲作のサイクルが重なるハレの日に供されてきた。家庭によっては砂糖をつけてそのまま食べるか醤油をつけて焼くかで分かれ、紅白の「あんびんもち」として親族への贈答品となることもある。現代では甘いあんこ菓子が主流となっても、地元では収穫祝いや1歳の誕生日に子どもに背負わせる成長祈願の風習として、根強く受け継がれている。
由来・歴史
江戸時代中期に誕生した「塩あんびん」は、当時砂糖が庶民には高価で手の届かないものだったことから生まれた知恵の菓子である。塩を使うことで小豆やもち米本来の甘みを際立たせる工夫がなされ、埼玉県北部・東部のもち米産地で独自の食文化として定着した。現在でも甘いあんが主流の中、ここでは古くからの製法がハレの日の行事食として残っている。
食べ方
もち米を一晩水に漬けて約1時間蒸し、餅つき機でついた後、一個分ずつ分けて平たく伸ばし、塩で味付けした小豆あんを包んでやや平たい丸に成形する。砂糖をつけてそのまま食べるのが一般的だが、醤油をつけて焼く食べ方もある。新米収穫時のお祝いのほか、桃の節句や端午の節句、初誕生日、4月と10月のお日待ち、八朔などの年間行事で食べられ、1歳の子どもに10個ほど背負わせて成長を祝う風習もある。
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産地
埼玉県の名物

かてめし
醤油を使うハレの日の飯物として、五目ちらしよりも重宝されたという秩父の名物料理。米のかさを増やす工夫から生まれた庶民の知恵が、現代も家庭で受け継がれる。

煮ぼうとう/ひもかわ
埼玉県を代表する幅広麺の煮込み料理。渋沢栄一が愛した「煮ぼうとう」は、毎年11月11日の命日に「にぼうと会」で供され、地元の食文化を今に伝える。

ゼリーフライ
「銭フライ」がなまって「ゼリーフライ」となった小判型の揚げ物。おからとジャガイモを主材に、ウスターソースの味付けとモチモチ食感が特徴の行田市民のソウルフードである。

いがまんじゅう
赤飯が栗のイガのようにまんじゅうを覆う、埼玉県北東部の縁起菓子。甘じょっぱい味わいともっちり食感が意外な調和を生み、ハレの日に親しまれてきた。

冷や汁/すったて
「すったて」とは、野菜をすりばちですりたてを食べていたことに由来する。四方を川に囲まれた川島町で稲作の農家に親しまれ、夏の農繁期に手間なく栄養を補給できるうどんのつけ汁として重宝された。

聖天ずし
江戸時代から変わらぬ姿で受け継がれる、熊谷・妻沼のハレの日の味。大きな油揚げに酢飯を詰めた稲荷ずし3本と巻きずし4切れのボリュームが、農作業の合間の腹持ちの良さとして親しまれてきた。