
群馬県
県庁所在地:前橋市
群馬県の食文化は、小麦粉を主軸とする「粉食文化」に貫かれている。山に囲まれた地形と寒冷な気候が、米作よりも麦作を優位にさせ、幅広麺の「おきりこみ」や焼きまんじゅう、すいとんなど、小麦粉を練った郷土料理が各地に根付いた。特に「おきりこみ」は、無塩で下ゆでせず幅広麺を野菜と煮込む独特の製法が全国でも類を見ない存在であり、群馬の粉食文化を象徴する。夏には県魚・鮎の塩焼きが神流川の漁火とともに旬を迎え、香り高い楢炭の火入れが鮎の旨味を引き締める。
これらの料理には、山間部の厳しい自然と、江戸時代から続く養蚕・製糸産業の影が重なる。養蚕に忙しい農家では、手早く作れる粉物料理が重宝された。下仁田ねぎやこんにゃく、上州牛といった県産食材も、標高差の大きな地形と澄んだ水が育んだものである。現代では「群馬のうどん」が水沢うどん、ひもかわ、館林のうどんという三つの個性で観光客を魅了し、古い粉食文化が新たな形で息づいている。
群馬県の定番名物
群馬県の名物一覧

焼きまんじゅう
江戸時代末期に前橋の原嶋類蔵が考案した「味噌づけまんじゅう」が起源。竹串に刺した発酵まんじゅうに甘みのある味噌だれを塗って焼く、群馬を代表する小麦粉菓子である。

鶏めし
秘伝のたれが決め手の「鶏めし」は、群馬県民と観光客に長年愛される名物。上州地鶏の瑞々しい肉質と、老舗が守り続ける味わいが魅力である。

群馬のうどん
幅10cm超の「ひもかわ」、日本三大に数えられる「水沢うどん」、地元産小麦の「館林のうどん」——粉食文化が根づく群馬が誇る三種の個性派うどんが、観光グルメとして県内外を魅了する。

すき焼き
「ぐんま・すき焼きの日」に県内の学校で給食として提供されるほど定着した、群馬の食文化。上州牛と下仁田ねぎなど県産食材だけで作る「自給率100%」の鍋料理で、745人分のギネス記録も達成した。

鮎塩焼き
群馬県の県魚・鮎を、神流川の楢炭で直火焼きする。夏の友釣り解禁期にしか味わえない、香り高く身の引き締まった逸品である。

ねぎぬた
「殿様ねぎ」と称された下仁田ねぎを酢味噌で和える、群馬の祝い料理。桃の節句や結婚式のもてなしに欠かせない、甘みと酸味の調和が特徴の一皿である。

ソースカツ丼
桐生市では「カツ丼」と言えば卵とじではなくソースカツ丼を指すほど定着した郷土料理。元祖は鰻屋で、伝統のタレとウスターソースをブレンドしたオリジナルソースが人気の発端となった。

おきりこみ/おっきりこみ
麺の生地を麺棒に巻いて包丁で「切り込み」入れることから名付けられた群馬の粉食文化の代表。無塩で下ゆでなしの幅広麺を野菜と煮込む独特の製法は、全国でも類を見ない。

やきもち
小麦粉を丸めて焼いた「やきもち」は、群馬の粉食文化が生んだ郷土料理。囲炉裏で焼く姿は地域によって「おやき」「じり焼き」と呼び名も変わる。

炭酸まんじゅう
重曹の苦味がアクセントの蒸しまんじゅう。砂糖が希少だった時代、十五夜や農作業のご褒美として特別なごちそうとして重宝された。

なまずの天ぷら
全国最大規模の利根川・渡良瀬川が流れる「群馬の水郷」板倉町の名物。泥抜きに1週間かける丁寧な下ごしらえで、クセのない白身がふっくらとサクサクの衣に包まれる。県外から食べに来る観光客も多い川魚料理の代表格である。

しめ豆腐
かまぼこのような独特の歯ごたえが魅力の豆腐加工食品。かつては群馬の祭りや節句に欠かせない行事食として、近隣の主婦たちが集まって手作りしていた。

上州きんぴら
ごぼうを太く切るのは上毛三山をイメージしたもの。1983年「あかぎ国体」で誕生した群馬の新しい郷土料理で、豚肉と特産野菜の旨味が詰まった甘辛炒め煮である。

かて飯
「かて」は米に加える具材のことで、もともとは米不足時代のかさ増し料理だった。群馬県では天神講の日に供されるほか、忙しい日の手軽なごちそうとしても重宝される。

すいとん
水で溶いた小麦粉を「取っては投げる」調理法から「とっちゃなげ汁」の名で親しまれる、群馬の素朴な小麦粉料理。米粉版や「ねじっこ」「つめりっこ」など、地域ごとに呼び名と文化が分かれる。

花いんげんの煮豆
標高900m以上の冷涼な高地でしか育たない「高原花豆」を、乾燥させてからやわらかく煮込んだ吾妻地域の定番保存食。おせちや神棚への供え物としても重宝されてきた。

こんにゃくの白和え
群馬の特産・こんにゃく芋を使った白和えは、精進料理として発展し、冠婚葬祭で色使いのルールが設けられるほど地域に深く根付いた。下仁田町の穏やかな気候が育むこんにゃくの食感が特徴である。

こんにゃく味噌おでん
「ひっぱたきおでん」とも呼ばれる群馬の冬の名物。こんにゃくの水気を布巾で叩き切ってから味噌だれを塗る、全国シェア9割の特産地ならではの食べ方である。

あまねじ/あまだんご
砂糖が貴重だった時代のおもてなし料理が、農作業の「小昼飯」として親しまれてきた。小麦粉の団子を甘い小豆汁に浮かべた、群馬の粉食文化が生んだ温かな甘味である。

ざく煮
婚礼の膳に供され、夫婦が「水と油にならぬように」と油を使わないという願いが込められた群馬の縁起汁。するめをだしにした独特の風味が特徴である。

ゆず巻き
干した大根でゆずの皮を巻く群馬の冬の行事食。おせちの「紅白なます」に代えて入れる家庭もあり、保存がきくため冬の家庭料理として重宝されてきた。

じりやき
焼くときに「じりじり」と音が鳴ることから名付けられた群馬の味噌風味お好み焼き。囲炉裏の灰の余熱でじっくり焼き上げる農村部の知恵が詰まった一品である。

ぎゅうてん
鉄板に「ぎゅっ」と押し付ける動作が名前の由来。桐生市の庶民食で、小麦粉を薄くといて小判型に焼くお好み焼き風の料理である。

呉汁
大豆をすりつぶした「ご」を加えた群馬の味噌汁。新豆が採れる秋から冬にかけて、旬の野菜とともに体を温める郷土料理として親しまれてきた。

すみつかれ
正月の鮭の頭と節分の豆、食べ頃を過ぎた大根を煮込む「すみつかれ」。江戸時代から初午の日に稲荷神社へ供え、無病息災を願う北関東の行事食である。

まゆ玉
養蚕の神「まゆ」を模したまゆ玉は、小正月に田んぼのどんど焼きで焼き、病気を避ける願いを込めて食べる。神棚へのお供えが先で、食べるのはその後という独特の流儀が群馬の養蚕文化を象徴する。

こしね汁
「こんにゃく」「しいたけ」「ねぎ」の頭文字を取った名前が示す通り、群馬県富岡市の3大特産をふんだんに使った汁物。家庭ごとにアレンジが加わるのも魅力である。
カテゴリ
群馬県の食文化
群馬県の食文化を形作ったのは、まず地形と気候である。県土の大部分を占める上毛三山を中心とした山岳地帯は、稲作に適さない寒冷な気候と急峻な斜面をもたらした。代わりに、冬の間に強い西風が小麦を乾燥させ、麦作に有利な条件を整えた。このため、江戸時代から小麦粉を練った「粉食」が生活の中心となり、おきりこみやすいとん、焼きまんじゅうなどが生まれた。囲炉裏の灰の余熱でじっくり焼くじりやきや、鉄板でぎゅっと押し焼きするぎゅうてんなど、農家の調理器具と知恵が結びついた料理も多い。
近世以降、群馬は養蚕・製糸産業の一大中心地となった。特に富岡製糸場を中心とした繭生産は、農家の副業として広く普及し、女性労働力が蚕の世話に割かれる生活が定着した。調理時間を短縮できる粉物料理や、保存がきく煮豆・漬物が重宝された背景には、こうした産業構造がある。街道沿いの宿場町では、旅人向けの鶏めしやソースカツ丼が発展し、桐生市では鰻屋をルーツとするソースカツ丼が「カツ丼」の代名詞となるほど定着した。
明治以降、県を流れる利根川・渡良瀬川水系の水郷地帯では、なまずの天ぷらなど川魚料理が育まれた。一方、標高900メートルを超える吾妻地域の冷涼地では「高原花豆」が栽培され、乾燥煮豆として保存食文化を支えた。こうした標高差による多様な生産環境が、こんにゃく、ねぎ、豆腐加工品など、地域ごとに異なる特産を生み出し、現代の群馬食文化の豊かな層を形成している。
よくある質問
- 群馬で冬にしか食べられない名物は?
- 「ゆず巻き」は干した大根でゆずの皮を巻く冬の行事食で、おせちに入れる家庭も多い。また「すみつかれ」も、正月の鮭の頭と節分の豆を煮込む冬の行事食として、初午の日に稲荷神社へ供える風習が残っている。
- 群馬の名物でお土産にしやすいものは?
- 「焼きまんじゅう」は駅や観光地で気軽に買え、甘味噌だれの香ばしさが人気だ。「炭酸まんじゅう」も重曹の苦味がアクセントの蒸しまんじゅうで、保存がきき持ち帰りしやすい。
- 群馬の名物で子どもでも食べやすいものは?
- 「あまねじ」は小麦粉の団子を甘い小豆汁に浮かべた素朴な甘味で、農作業の「小昼飯」として親しまれてきた。味も食感も優しく、小さな子どもでも食べやすい一品である。
- 群馬で地元の人が日常食べる名物料理は?
- 「こしね汁」は富岡市の家庭に根付いた汁物で、こんにゃく・しいたけ・ねぎの3大特産を使う。家庭ごとにアレンジが加わり、地元の人々の食卓に今も並ぶ身近な味である。