
神奈川県
県庁所在地:横浜市
神奈川県の食文化は、開港と近代化の交差点に立つものだ。1859年の横浜開港以来、中華街の中華料理や海軍の洋食が流入し、シューマイや牛鍋、サンマーメンといった和洋折衷の味が生まれた。これらは「外国人のための料理」として始まりながら、やがて県民の日常に深く根付いた。
一方、丹沢・大山や相模原の山間部、三浦半島の漁村では、古くからの日本の食文化が脈々と受け継がれている。けんちん汁、小田原かまぼこ、生しらす丼など、寺社の精進料理から漁師の即興料理まで、地形の多様さが食の多様さを生んだ。海と山、都市と田舎が隣り合う神奈川だからこそ、対照的な味が同じ県内で共存する。
神奈川県の定番名物
神奈川県の名物一覧

シューマイ
横浜市のシューマイ消費額は全国平均の2倍以上。崎陽軒の駅売店シウマイと中華街の存在が、神奈川県民の食文化を形作った。

よこすか海軍カレー
明治時代、日本海軍が脚気予防のため導入した「海軍カレー」を現代に再現した横須賀発祥の名物。牛乳・サラダを添える海軍式のスタイルで、レトルトは20種類以上展開される。

生しらす丼
水揚げ当日しか味わえない幻の一品。湘南・茅ヶ崎・鎌倉・江の島で獲れた生しらすを酢飯に豪快に盛り付け、醤油をたらして食す海の幸丼である。

小田原かまぼこ
「蒲(がま)の穂や鉾に似ている」という名前の由来を持つ、白身魚のすり身を木の板に乗せて蒸し上げた小田原の名物。扇形にぷっくりとはみ出した独特の形状が特徴である。

サンマーメン
「生馬麺」と書く由来は「新鮮でシャキシャキした素材を上に乗せた麵」の意。横浜中華街の高価な肉そばに代わる庶民のまかないとして生まれた、野菜あんかけラーメンである。

牛鍋
1862年に横浜「伊勢熊」で誕生した、すき焼きとは異なる「煮る」牛鍋。開港直後の外国人居留地で生まれた和洋折衷の味は、妻の猛反対を押し切って始まったという。

マグロのかぶと焼き
巨大なマグロの頭が丸ごとテーブルに上がる豪快な料理。元は三崎の漁師たちが船の煙突で蒸し焼きにした始まりで、今では希少部位を味わえる観光名物となっている。

ワカサギの甘露煮
水あめで照りを出した甘辛い味付けが特徴。大正7年に霞ヶ浦から移植されたワカサギは、芦ノ湖の澄んだ水で100年以上も育まれ、正月の定番保存食として親しまれてきた。

とん漬け
イノシシを味噌に塗って焼いた武士の知恵が、豚肉の名物へと変貌した。厚木市を中心に神奈川県で親しまれる味噌漬け豚肉は、ご飯のお供として現代も愛される。

茹で落花生
日本初の落花生栽培地・神奈川が誇る「うでピー」。出荷できない未熟豆を農家のおやつとしたのが始まりで、今や冷凍商品として年間を通じ楽しめる名物になった。

大山の豆腐料理
江戸時代、ひと夏に20万人が訪れた大山詣りで参拝客がすすり歩いた名物豆腐。丹沢の清水と奉納された大豆で作る、水分多めのやわらかな味わいが特徴である。

へらへら団子
「箆に似ている」「平たく押しつぶした形」など諸説ある名前の由来が興味深い、横須賀市佐島のあんころもち。江戸時代から続く船祭りで豊漁と無病息災を願い奉納されてきた。

けんちん汁
鎌倉・建長寺で700年以上続く精進料理。落とした豆腐をくずして入れた逸話があり、野菜くずを無駄なく使う知恵が詰まった温かい汁物である。

奈良茶飯
東海道の宿場・川崎で旅人を魅了した「ファーストフード」。十返舎一九の『東海道中膝栗毛』に登場し、大名も立ち寄る人気店となった万年屋の名物料理が、現代に復活した。

酒まんじゅう
「酒まんじゅうが作れることが嫁入りの条件」とされた相模原の儀礼食。火山灰台地の畑作文化が生んだ、酒種発酵の風味豊かな蒸しまんじゅうである。

梅ごはん
戦国時代から続く小田原の梅文化が生んだ夏の名物料理。梅干しとちりめんじゃこの相性が、だし炊きごはんに爽やかな風味を添える。

割り干し大根のはりはり漬け
「パリパリ」と歯ごたえを楽しむ三浦の味。日本一大根の産地・三浦市で、古くから親しまれてきた冬の定番漬物である。

かて飯
貴重な米をかさ増しするため生まれた相模原の混ぜご飯。農作業の「糧(かて)」として名付けられ、祭りや彼岸にはごちそうとして親しまれた。

かんこ焼き
雅楽の太鼓「鞨鼓」に似た形が名前の由来。江戸時代から続く相模原・津久井の山間の知恵が詰まった、灰で蒸し焼きにした素朴なおやき。

にごみうどん
「濁る」からか「煮込み」がなまったのか、名前の由来は諸説ある相模原・津久井の郷土麺。稲作に不向きな土地で小麦栽培が盛んな背景から、昭和40年代までは毎日のように食された。

石垣団子
サイコロ状のさつまいもが石垣に見えることから名付けられた相模原の郷土菓子。火山灰台地で育った地粉とさつまいもの素朴な甘みが、農作業の合間に親しまれた「おこじゅう」として受け継がれている。

のらぼう菜のおひたし
江戸時代の大飢饉で多くの人の命を救った伝統野菜・のらぼう菜を、シンプルにおひたしで味わう。花茎のやわらかな食感とほのかな甘みが特徴の春の味覚である。

田にしの味噌煮
春の飯山観音花祭りで「タニシ町」と呼ばれるほどの賑わいを見せた、甘辛味噌に煮込んだ田にしの郷土料理。かつては農家の日常食として親しまれた。
カテゴリ
市区町村
神奈川県の食文化
神奈川県の食文化を形作る地理的条件は、東京湾に面した沿岸部と、丹沢山地・箱根山地に囲まれた内陸部という対照的な地形にある。沿岸部は古くからの漁場であり、三崎のマグロ、湘南のしらす、相模湾の豊かな海産物が水揚げされた。一方、相模原台地や津久井の山間部は火山灰土壌で稲作に不向きなため、麦類や落花生、大豆などの畑作が盛んとなり、かて飯やにごみうどん、酒まんじゅうなどの粉物料理が発達した。
歴史的背景として、横浜・横須賀・小田原といった港町・宿場町の存在が大きい。横浜は開港後、日本最大の外国人居留地となり、中華料理や洋食が国内初の本格的な形で流入した。横須賀は海軍の鎮守府として「海軍カレー」が定着し、小田原は東海道の宿場町としてかまぼこや梅干しの加工技術が発展した。また、大山は江戸時代の参詣道として20万人もの参拝客を集め、豆腐料理などの門前町の食文化が形成された。
こうした港と街道、港と山が接する構造が、食材の流通と調理法の交換を促進した。中華街の高級肉そばに対して生まれた庶民のサンマーメン、海軍の洋食を地元がアレンジした横須賀海軍カレーなど、外来の食文化が日本の素材と出会って独自の進化を遂げた点が、神奈川県食文化の特徴といえる。
よくある質問
- 神奈川でお土産に買える名物は?
- 小田原かまぼこは日持ちも良く、扇形の見た目も印象的なお土産だ。横浜中華街のシューマイや、横須賀海軍カレーのレトルトも手軽に持ち帰れる。
- 神奈川のふるさと納税で人気の返礼品は?
- 生しらすは鮮度が命で通販が難しいが、小田原かまぼこやワカサギの甘露煮、茹で落花生の冷凍品などは返礼品としても人気が高い。
- 神奈川の子どもでも食べやすい名物は?
- サンマーメンは野菜たっぷりのあんかけで辛くなく、子どもに優しい味わいだ。シューマイも小さく食べやすく、県内の子どもたちに馴染み深い。
- 神奈川で地元民が日常食とする名物は?
- シューマイは横浜の駅売店で気軽に買え、県民のソウルフードとなっている。相模原では酒まんじゅうやかて飯も、今も祭りや家庭で食される。