
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
米のとぎ汁をベースに干し大根、人参、ごぼう、貝類、こんにゃく、油揚げ、豆腐など10種類以上の具材を味噌で煮込み、熱く熱した石を投入して食べる鍋料理である。愛媛県今治市大島の宮窪地区で採れる「大島石」の石切り場で、寒い冬の屋外作業に耐えるための賄い食として発達した。石を入れることで長時間保温でき、凍てつく石切り場で身体を温める工夫が凝らされている。かつては石切り場と家の往復が困難なため現地で食べられ、水を節約するために米のとぎ汁を使用した。現在は石を入れる手間から頻繁には作られないが、石なしの汁料理として家庭に残る。
由来・歴史
今治市大島は古くから石材業が盛んで、宮窪地区の「大島石」は日本を代表する高級石材として建築材や墓石に用いられてきた。石切り場で手近な石を使い、職人たちが寒い冬の現場で身体を温めるために考案したのが「石花汁」である。名称の由来には二説あり、熱した石を入れた際に湯気がぶくぶくと沸き上がる様子が花のように見えること、または豆腐がくずれて花が咲くように見えることから付いたとされる。こんにゃくは「砂おろし」として石工職人に欠かせない食材であり、必ず使用された。
食べ方
昆布と煮干しの出汁で具材を煮込み、火が通ったら味噌で味付けする。最後に熱く熱した石を投入し、石の熱で保温しながら食べる。煮るほどにコクが増し、三つ葉としょうが汁を加えて盛り付ける。ごま油を少し入れると風味が一層引き立つ。冬の寒い時期に屋外の石切り場で食べられていたが、現在は石を入れない汁料理として家庭で食されることもある。
オンラインで買う
ふるさと納税で取り寄せる
産地
汁物の名物

せんべい汁
平成になって「せんべい汁」の名が定着した観光発の郷土料理。戦前の農家の保存食が、八戸市の観光PRで全国に名を知られる地域おこしの立役者となった。

しじみ汁
琵琶湖固有種「セタシジミ」の殻がふっくら開くと、濃厚な出汁が広がる。昭和40年代までは日常の味だったが、環境悪化で激減し、今や春の贅沢となっている滋賀の滋味。

しじみ汁
「シジミは水からヒトクラ」——宍道湖の漁師が伝える、一瞬の火入れで引き出す極上の旨味。日本屈指の漁獲量を誇る大粒のヤマトシジミを、出雲の家庭で日常的に味わう郷土の味噌汁である。

さつま汁
闘鶏で負けた鶏をその場で調理したのが始まりという、鹿児島の武士の食文化が息づく具だくさんの味噌汁。鶏の出汁が染み出した滋味深い一杯は、今も冬の定番として親しまれている。

サンマのすり身汁
石巻では「松葉汁」と呼ばれるサンマのすり身汁。大根を松葉に見立てたひき菜を入れる独特の盛り付けが、港町の食文化を象徴する。

三平汁
藩主が気に入った漁師の名がついたという説や、三平皿に盛ることからともいわれる。塩漬けのサケやニシンを野菜と煮込む、北海道の冬を代表する郷土料理である。
愛媛県の名物

せんざんき
鶏を「千のように斬る」という名の由来や、中国語「軟炸鶏」が訛った説など諸説ある、今治発祥の骨付き鶏の唐揚げ。骨から出る旨味と濃厚な下味が特徴である。

しょうゆめし
室町時代から続く「しょうゆめし」は、松山のハレの日に欠かせない炊き込みご飯。冷めてもふっくらとした醤油の香ばしさが特徴で、昭和30年代には駅弁としても全国に広まった。

太刀魚巻/太刀巻
創業150年の老舗魚屋が1987年に考案した、竹串にらせん状に巻いた太刀魚の炭火焼。各店秘伝のタレが味の決め手となり、宇和島観光の名物として定着した。

さつま
「さつま」の名の由来は島津家の家紋に似た盛り付けからとも、薩摩伝来説とも言われる謎多き愛媛の郷土料理。ぱさぱさした麦飯をおいしく食べるため漁師が舟上で考案した工夫料理である。

味噌汁(麦味噌)
年貢米の代わりに麦を食べる知恵が生んだ、香り高い麦味噌の味噌汁。はだか麦をふんだんに使った芳醇な甘みが、瀬戸内の家庭を支えてきた。

みかんずし
「蛇口からミカンジュース」という都市伝説が現実化した愛媛ならではの寿司飯。かぼすやみかんの果汁で炊いたごはんは、米酢が希少だった南部地域で生まれた知恵の結晶である。