
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
宍道湖産の大粒ヤマトシジミを主材とし、小ねぎを添えた味噌汁またはすまし汁である。冬は味噌汁仕立て、夏はすまし汁風に季節で調理法を変えるのが特徴で、シジミが口を開いた瞬間に味噌を入れる「ヒトクラ」の技が旨味の決め手となる。主な伝承地域は島根県東部の出雲地方で、全国7番目に大きな汽水湖である宍道湖は国内トップレベルのシジミ漁獲量を誇り、「宍道湖七珍」の一つとして知られる。年間を通じて食べられるが、特に土用の身が大きく栄養価の高いシジミを使った汁は夏バテ予防として格別とされた。家庭ごとに昆布を入れるなどの工夫があり、現代では飲食店や宿泊施設への直卸しにより観光客にも親しまれている。
由来・歴史
宍道湖のシジミ漁は約300名の漁師によって支えられ、手掻き・機械掻き・入り掻きの多様な操業が行われる。漁師や家族がアスファルトの上で殻の音を聞き分けて選別する伝統的な手法が今も継承されている。かつてはリヤカーにシジミを積んで町中を売り歩く「シジミ売り」が朝の風物詩であり、東京の納豆売り・京都の豆腐売りに並ぶ出雲の名物であった。神西湖でも少量の漁獲があり、地域の食文化に深く根付いている。
食べ方
砂出しはシジミが生息する環境と同じ塩分濃度1%の水で一晩行い、よく洗ってから調理する。鍋にシジミを入れ火にかけ、口が開いたらすぐに味噌を入れる「ヒトクラ(一瞬煮立つ)」が鉄則で、煮すぎると身が縮む。昆布を加えて旨味を相乗させるのも一般的である。年間通じて食べられるが、土用のシジミは身が大きくプリプリとした食感で、夏バテ予防として特に珍重された。
オンラインで買う
ふるさと納税で取り寄せる
産地
汁物の名物

塩くじら汁
山形の夏を乗り切る伝統のスタミナ汁。塩漬けのくじら脂身と新じゃが、旬の野菜を煮込み、暑さに備えてきた内陸の知恵が詰まる。

たちの味噌汁/スケソウダラの白子の味噌汁
「たち」とはタラの白子の北海道方言。丸ごと入れた味噌汁は、武士に「切腹を連想させない縁起の良い食べ物」として喜ばれた歴史を持つ。

たけのこ汁
山へ帰ると言われるほど鮮度が命の根曲がり竹に、海なし長野が愛するサバ缶を合わせた意外な組み合わせ。昭和に広まった缶詰が、山の幸を引き立てる名脇役となった郷土の味噌汁。

しじみ汁
琵琶湖固有種「セタシジミ」の殻がふっくら開くと、濃厚な出汁が広がる。昭和40年代までは日常の味だったが、環境悪化で激減し、今や春の贅沢となっている滋賀の滋味。

せんべい汁
平成になって「せんべい汁」の名が定着した観光発の郷土料理。戦前の農家の保存食が、八戸市の観光PRで全国に名を知られる地域おこしの立役者となった。

石花汁
熱した石を投入すると湯気が花のように舞い上がる、今治市大島の石切り場発祥の保温鍋。米のとぎ汁を使う知恵と、職人の賄い食としての歴史が息づく。
島根県の名物

白魚のかき揚げ
「食べなければ春が来ない」と地元民に愛される宍道湖の白魚を、ふわっとしたかき揚げで味わう。江戸時代から「日本一」と謳われた松江の名産を、旬の野菜とともに揚げた逸品である。

すまし雑煮
白い丸餅は正月三が日まで、四日目からはよもぎ入りのてんこ餅に替わるという古い習わしを持つ雑煮。出雲では朝廷献上の十六島のりを具に使い、磯の風味を堪能する。

すもじ
「生き腐れ」と呼ばれる傷みやすいサバを、内陸まで運ぶ知恵として生まれた焼きサバのちらし寿司。交通の要衝・雲南市で名物となった、海と山を結ぶ食文化である。

さざえ飯
隠岐の島で人が集まる席に欠かせない「さざえ飯」。サザエのゆで汁で炊き込むシンプルな釜飯は、岩のりで巻いたのり巻きとしてお正月や祭りに振る舞われる。

笹巻き
熊笹の芯棒が串代わりになる手軽な食べ方が特徴。旧暦端午の節句に男の子の成長を祈り、島根の家庭で一家総出で作られる伝統の米粉菓子である。

隠岐アラメの炒め煮
「デコボコと荒い表面」が名前の由来となった隠岐のアラメは、漁師が「箱めがね」を装着して海中から刈り取る伝統的な漁法で獲られる。春の新芽を乾燥保存し、炒め煮や白和えなど一年中親しまれる海の恵みである。