
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
さんまずしは、サンマを頭尾付きの姿のまま酢で締め、すし飯の上に載せた押し寿司風の郷土料理である。三重県東紀州地域、特に熊野市と尾鷲市を中心に伝承され、熊野灘で漁獲される脂肪分の少ない秋サンマを使用する。祭りや正月など祝事の日に各家庭で作られ、祝い行事の引き出物としても用いられてきた。熊野市では背開き、尾鷲市では腹開きと開き方に地域差があり、近年は頭を除いた形で作られることも増えている。昭和50年に尾鷲市の飲食店が販売を開始して以来、名物料理として定着し、現在は様々な店で楽しめる。
由来・歴史
熊野市有馬町の産田神社には「さんま寿し発祥の地」の案内が建てられている。同神社では子どもの健やかな成長を願う「奉飯」という行事があり、中骨がついたままのさんまずしを食べさせる。「気骨のある子に育ってほしい」という願いと、カルシウム補給の意味があったと考えられる。昭和50年に尾鷲市の飲食店が販売を開始し、東紀州地域を代表する名物料理へと発展した。
食べ方
熊野灘で漁獲した脂肪の少ないサンマを、熊野市周辺では背開き、尾鷲市周辺では腹開きにして塩漬けし、水洗い・塩抜きした後、酸柑・酸酢などの柑橘の酢で締める。すし飯の上に姿のまま載せて押し、からし・しょうが・ごまなどを添えて食べる。9月頃に北海道沖で捕れたサンマが11月下旬から三重県沖に南下し、この時期の秋サンマが最も適している。祭りや正月など祝事の日に各家庭で作られ、近年は飲食店でも通年楽しめるようになった。
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産地
寿司の名物

さんまずし
硬く握った姿から「さえらの鉄砲」とも呼ばれる、熊野灘の寒サンマを使った押し寿司。佐藤春夫も「ふるさとで二番目に美味しい」と絶賛した、山間部の貴重な栄養源だったごちそうである。

笹ずし
上杉謙信が戦の保存食として携行した「謙信寿司」。笹の葉の殺菌・防腐効果を活かし、山菜をのせた手づかみの寿司で、長野県飯山市の無形民俗文化財に指定されている。

笹寿司
戦国時代に上杉謙信の兵士が器代わりに使ったという伝承を持つ、笹の葉に酢飯と具を盛り付けた上越地方の名物。2014年には「糸魚川 七夕は笹ずしの日」として記念日登録された。

さんま寿司
十津川村で南北で異なる製法が伝わる「さんま寿司」。北部は長期発酵のなれずし、南部は酢で締めた押し寿司と、同じ名で対照的な味わいが楽しめる。

酒ずし
島津藩主の花見の残りごちそうが発酵して生まれた、鹿児島の押しずし。地酒「灰持酒」に漬けた米と山海の幸を重ね、半日寝かせる贅沢な春の味。

鮭の飯ずし
紅白の縁起物として正月に欠かせない津軽の保存食。もち米の発酵力で塩サケを熟成させ、笹の葉の香りと乳酸の酸味が織りなす芳醇な味わいが特徴。
三重県の名物

たこ飯
鳥羽市の畦蛸(あだこ)では「多幸めし」とも呼ばれ、縁起の良い名前で親しまれる。伊勢湾の荒波にもまれたプリプリの真ダコを、米とシンプルに炊き込んだ漁師の味である。

てこねずし
漁師が船上で魚を手で混ぜあわせたことから「てこねずし」の名が生まれた。熊野灘の新鮮なカツオやマグロを酢飯と合わせる、三重県を代表する郷土料理である。

豆腐でんがく
高足の舞を舞う田楽法師の姿に似せて名付けられた、伊賀の伝統的な豆腐料理。炭火で焼いた木綿豆腐に甘辛い田楽味噌を塗り、炙り焼きで仕上げる。

さめなます
「鮫」に「交わる」の字が入る縁起物。三重県志摩の祝い膳では、さばきたてのネコザメを湯通しして発酵味噌だれで味わう「さめなます」が欠かせない一品となる。

魚の漬物(塩辛)
「サイラのしょから」という呼称が残る三重県の魚の塩辛。冷蔵庫のない時代、熊野灘で大量に水揚げされた鮮魚を一匹丸ごと甕に漬け込み、透き通るような赤い身を春に味わう保存食である。

魚のたたき/なめろう
「なめろう」は黒潮の海の道を伝って房総から入った呼称で、志摩の一部にだけ残る謎の名称。熊野灘の漁師が船でとれたてをさらに美味しく食べるために生み出した、骨までドロドロにたたく豪快な鮮魚料理である。