
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
鶏肉、干ししいたけ、里芋、かまぼこ、こんにゃく、人参、焼き豆腐などを小さく切り、いりこ出汁で醤油味に仕上げた具だくさんの汁ものである。野菜の旨味が溶けだした優しい味わいが特徴で、熊本県人吉球磨地域を中心に伝承されてきた。もともとは秋祭りの会席膳に供され、現在は正月や祝い事にも欠かせない料理として定着している。家庭や地域ごとに具材や出汁に差異があり、人吉地区では焼き豆腐、球磨郡あさぎり町では厚揚げ、多良木町では油揚げを入れるなど、多様な受け継がれ方をしている。
由来・歴史
名前の由来は、会席膳で蓋付きの深い椀に汁を盛り付けていたことから「壺の汁」と呼ばれ、それが変化して「つぼん汁」となった。もともとは人吉球磨地域の秋祭りに供される会席膳の一つであり、実りの秋への感謝と豊作を祝う意味を持っていた。祝い事には具材を7種類か9種類など奇数でそろえるという慣わしがある。
食べ方
祝い事の際には赤飯とお煮しめとともに供されるのが基本である。人吉市の国宝・青井阿蘇神社の「おくんち祭」(旧暦9月9日)では、この組み合わせで必ず提供される。煮しめの食材の切れ端を無駄なく小さく切って具にするという、食材をまるごといただく風習から生まれた食べ方が特徴である。時季は秋祭りを起源としながら、現在は正月をはじめとする年中の祝い事で広く食べられている。
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産地
汁物の名物

つがに汁
生きたまま石臼で挽くという衝撃の調理法。四万十川のモクズガニを丸ごと粉砕し、濃厚な出汁を搾り取る高知の伝統汁物である。

打ち込み汁
打ち立ての麺を別ゆでせずそのまま鍋に「打ち込む」様子から名付けられた、香川の農村冬の日常食。手早く作れる素朴な汁物で、麺の太さはその日の手づくり次第。

打ち豆汁
雪深い湖北地域で冬に欠かせない「打ち豆汁」。大豆を木づちで花型に潰して乾燥させた打ち豆を、かぶや里芋と共に煮込む味噌汁で、お寺の報恩講ではお講汁として振る舞われる。

遠山かぶの粕汁
「ぶっかく」と呼ばれる独特の切り方で小さく刻んだ遠山かぶを、前日から煮込んだ粕汁は、雪深い米沢の冬を代表する滋味深い郷土料理である。

とうがん汁
「冬瓜」と名付けられた由来は、皮が厚く日持ちが良く冬までもつことから。夏が旬の愛知県の名物汁物で、水分補給にも重宝される。

てっぽう汁
箸でカニの足をつつく仕草が鉄砲に弾を込めるように見えたことから名付けられた、根室発祥の漁師汁。花咲ガニの濃厚な出汁が決め手の味噌汁は、かつて夏から秋の漁期に漁師たちが海で作って食べた手軽な一品である。
熊本県の名物

焼鮎の甘露煮
骨まで食べられるほどふっくらと煮込まれた焼鮎の甘露煮は、球磨川の秋の風物詩「落ちアユ」を使った人吉・球磨地域の冬の保存食である。

山するめのきんぴら
干したけのこがスルメに見えたことから「山するめ」と名付けられた熊本の保存食。シャキシャキとした歯ごたえが酒のつまみにもぴったりの一品である。

柚餅子
同じ名前で全く異なる2つの姿を持つ柚餅子。菊池の竹皮包み蒸し菓子と、人吉・球磨の柚子の皮を器にした塩味の保存食。南北朝時代の兵糧から、球磨焼酎のつまみまで、米どころ・柚子の里の知恵が詰まっている。

豆腐の味噌漬け
800年前の平家落ち武者が伝えたとされる保存食。半年間味噌に漬け込むとチーズのような風味に変化し、山間部の貴重なタンパク源として親しまれた。

とじこ豆/豆菓子
甘い小麦粉の生地で大豆を「閉じ込めた」という名の由来が興味深い。山鹿市菊鹿地区で年末に必ず作られた郷土菓子で、今はピーナッツ入りが主流となっている。

たこ飯
「干しダコ」をもどして炊き込む熊本県天草の郷土料理。潮風に揺れる吊るし干しの風景が夏の風物詩となっている。弾力のあるマダコの旨味が凝縮された保存食の知恵が、現代も受け継がれる。