
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
大豆と麦味噌を原料とする発酵保存食で、水分を抜いた硬い豆腐を高濃度の味噌に漬け込む。半年熟成によりチーズに似た食感と風味を獲得する。主な産地は熊本県八代市泉の五家荘地域と球磨郡五木村で、焼き畑農業が盛んな山岳地帯に位置し、物流困難な環境の中でタンパク質を確保する知恵として発達した。かつては日常のごはんのおかずや酒のつまみとして食卓に並び、現在は県内各地で特産品として製造される。家庭では木綿豆腐を水切りして数日間漬け込む簡易版も作られ、漬け期間や味噌の種類、柚子胡椒や唐辛子の添加など家ごとにアレンジが加えられている。
由来・歴史
源平合戦の後、源氏に敗れた平家の落ち武者が肥後連山の麓に潜伏し、製法を伝えたとされる。五家荘や五木村では焼き畑で栽培した大豆と麦から自家製の豆腐・麦味噌が作られ、これらを組み合わせた保存食として定着した。八代市坂本町鮎帰の「かずら豆腐」はつたかずらで縛って運べるほど硬く、五木村の「樫の木豆腐」も大豆を多く使った堅牢な食感が特徴で、いずれも味噌漬けに適していた。
食べ方
漬け込み期間は数日から半年と幅があり、日が経つほど味が濃厚になるため好みの具合で取り出す。薄切りにしてご飯に載せるか、酒のつまみとしてそのまま味わう。わさび醤油を添えることもある。細かく刻んでおにぎりやサラダに混ぜるほか、もろみ漬けはパンに塗ったりパスタと和えたりする新しい食べ方も生まれている。
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産地
漬物の名物

瓜の鉄砲漬
砲筒のような瓜に「火薬」見立ての青唐辛子を詰めた成田名物。成田山新勝寺のお土産として知られ、店ごとの味比べが通の楽しみ方である。

わかさぎとれんこんの酢漬け
霞ヶ浦の名物ワカサギと日本一の産地・土浦のれんこんを、甘酢に漬け込んだ爽やかな郷土料理。骨まで食べられる小魚とシャキシャキの根菜が、漁師町の食文化を今に伝える。

野菜の漬物
本居宣長が「香の物」として愛した「松阪赤菜」や、300年前に蒲生氏郷が近江から伝えたとされる歴史を持つ。三重県内には日野菜漬け、伊勢たくあん、白瓜の鉄砲漬けなど、各地域の風土が生んだ多種多様な野菜の漬物が存在する。

トキシラズ/トキ鮭の焼漬け
「時期を知らずにとれる魚」が名前の由来。アムール川生まれの希少な春サケを、脂がのった若いうちに焼いて漬けた北海道の初夏のごちそうである。

スルメの麹漬け
鳥取の山間部で生まれた「おふくろの味」——スルメイカを海風で干し、麹に漬け込むことで冬の保存食として長く親しまれてきた。

すんき漬け
塩を一切使わない無塩の漬物で、貴重な塩を節約する生活知恵から生まれた木曽地域の発酵食品。独特の酸味が特徴で、最近ではヨーグルトに匹敵する乳酸菌含有量が注目されている。
熊本県の名物

つぼん汁
「壺の汁」が訛って「つぼん汁」となった、熊本県人吉球磨の祝い料理。秋祭りの会席膳から発展し、具材は7種類や9種類の奇数でそろえるのが慣わしである。

焼鮎の甘露煮
骨まで食べられるほどふっくらと煮込まれた焼鮎の甘露煮は、球磨川の秋の風物詩「落ちアユ」を使った人吉・球磨地域の冬の保存食である。

山するめのきんぴら
干したけのこがスルメに見えたことから「山するめ」と名付けられた熊本の保存食。シャキシャキとした歯ごたえが酒のつまみにもぴったりの一品である。

とじこ豆/豆菓子
甘い小麦粉の生地で大豆を「閉じ込めた」という名の由来が興味深い。山鹿市菊鹿地区で年末に必ず作られた郷土菓子で、今はピーナッツ入りが主流となっている。

たこ飯
「干しダコ」をもどして炊き込む熊本県天草の郷土料理。潮風に揺れる吊るし干しの風景が夏の風物詩となっている。弾力のあるマダコの旨味が凝縮された保存食の知恵が、現代も受け継がれる。

太平燕
燕の巣の代わりに揚げたゆで卵をトッピングする、縁起のよい中華風春雨スープ。明治時代に福建省から熊本へ伝わり、今や県民のソウルフードとして定着している。