
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
酢でしめた魚、すし飯、紺のりを木枠に重ね入れ、一晩重しをして寝かせた押し型の寿司である。一夜かけて押すことで魚とすし飯が互いの旨味を引き出し、ほど良い酸味が食欲をそそる。金沢市周辺・加賀地域を中心に伝承され、加賀百万石の食文化を色濃く残す。主に正月や冠婚葬祭、春祭り・秋祭りなどハレの日に食べられ、九谷焼の大皿に盛りつけられて祝宴を彩る。家庭によっては「笹ずし」「柿の葉ずし」「おけらずし」など派生型が作られ、魚が手に入りにくい地域では油揚げや塩くじらを使う工夫も見られた。
由来・歴史
石川県では古くから祭りや祝いごとに「押しずし」が欠かせなかった。金沢市では木枠を用いた本格的なものが、加賀では熊笹で包む「笹ずし」や柿の葉を使う「柿の葉ずし」が発展した。ひと昔前は米一升で50人前ほどの「笹ずし」を一家総出でこしらえ、近所におすそわけするのが習わしであった。魚が手に入りにくい地域では油揚げや塩くじらを具材とする「おけらずし」も生まれた。
食べ方
木枠に酢飯を敷き、酢でしめた旬の魚を乗せ、紺のりを重ねてふたをし、一晩重しをして寝かせる。春ならタイやイワシ、アジ、秋はサバ、シイラなど季節の魚介を用い、木の芽やきんかんで彩りを添える。1日ほど寝かした後、そのまま食べる。行事の際は家族で工程を分担し流れ作業で大量に作り、九谷焼の大皿に盛りつけて祝宴に供した。
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産地
寿司の名物

鯖の棒ずし
「鯖街道」の名残を今に伝える棒状の押し寿司。大津や長浜の曳山祭りのご馳走として欠かせず、寒い季節に味わう伝統の味である。

さばの姿ずし
背開きのサバに酢飯をぎっしり詰め、頭と尾を立てて豪快に盛り付ける「皿鉢料理」の定番。京都とは対照的に酢と塩をきかせた味わいが、ゴマサバの脂の少なさを引き立てる。

さばずし
江戸時代に鯖街道の塩漬けサバから生まれた「さばずし」は、京都の祭りに欠かせないハレの日の味。酢でしめた塩サバとすし飯の組み合わせが、庶民に貴重な青魚をもたらした。

押し抜きずし
サワラとそら豆を押し型で整えた讃岐の春の祝いずし。姑が若嫁に持たせる里帰り土産として、実家と婚家の仲を取り持つ縁起物として親しまれた。

お方ずし
「お方」とは庄屋のこと。農繁期前の「地獄入り」行事で、小作人への労いとして庄屋が振る舞った豪華な鮨が原型。焼きほぐしたアジと甘煮のうずら豆を俵型に握る、大分市竹中地区の郷土鮨である。

なれずし
約800年以上の歴史を持つ日本三大なれずしの一つ。塩サバと古米を植物の葉に包み発酵させ、秋祭りの夜宮からその翌日まで家族一人に1本ずつ振る舞われる。
石川県の名物

さわらの昆布じめ
石川県ではカジキマグロを「サワラ」と呼ぶ独特の方言が残る。北前船が運んだ昆布で締めた、能登半島発祥の郷土料理。淡白な身が昆布の旨味を吸い、ねっとりとした食感に変わる。

さざえめし/さざえべし
400年続く海女の技が生んだ「輪島海女採りさざえ」。磯の香りとコリコリの食感が染み込む炊き込みごはんは、能登の夏の味覚を象徴する名物料理である。

すいぜん
輪島の葬儀で供される白い寒天菓子。朱塗りの漆器に菊水や輪花の形で盛り付けられ、男性がすった黒ごまの甘じょっぱいごまだれをつけて食べる。精進料理が刺身の代わりに発展した独特の食文化である。

にしんの昆布まき
北前船が運んだ北海道のニシンと昆布が出会い、能登の祝いの味になった。青柏祭の祝い唄にも登場する、海運の歴史が詰まった保存食である。

なすそうめん
「なすのそうめんかぶし」とも呼ばれる金沢の夏の知恵料理。そうめんとなすを煮こんだ煮物で、麺より煮物という独特の食感が特徴。奥能登のそうめん産地の歴史が、食べ残した麺の再利用から生まれた。

なすのオランダ煮
「オランダ煮」の名は長崎経由で伝わった西洋料理法に由来する。へた紫なすを使った金沢の夏の定番で、冷やして食べるのが一般的だ。