
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
卵型の個性的な形と鮮やかな紫色のへたが特徴の加賀野菜「へた紫なす」を、甘辛いだし汁で煮含めた素朴な煮物である。皮は薄く色艶が良く、身は柔らかく甘みがあるのが特徴で、煮崩れしにくいため丸ごと調理されることが多い。石川県金沢市の金城・崎浦地区などで主に栽培され、明治20年頃から有松・泉地区の小木系統から発展した伝統品種である。夏から中秋の旬の時期、なすが大量に収穫される農家でよく食べられ、冷やして提供されることが一般的だった。家庭ごとに醤油と砂糖の配合や煮込み時間が異なり、仕上げに生姜や唐辛子を添える派もある。現代では加賀野菜のブランド力向上とともに、郷土料理として再評価されている。
由来・歴史
明治20年(1945年)頃、金沢市有松・泉地区で栽培されていた「小木」という系統のなすから発展した。昭和初期には金城・崎浦地区が主産地となった。昭和20年以前からの栽培品種として「加賀野菜」に認定され、現在は15品目の一つとしてブランディングされている。料理名の「オランダ煮」は、長崎県を経由して伝わった西洋の調理法に由来すると伝えられる。
食べ方
へたを切ったなすに切れ込みを入れ、沸騰した湯でアクを抜いた後、新たなだし汁で醤油・砂糖とともに煮含める。味が染みたら冷やして食べるのが一般的で、仕上げに生姜や唐辛子を加えることもある。夏から中秋の旬の時期、なすそうめんと並ぶ夏の味覚として親しまれる。なすを塩漬けやぬか漬けにしてから丸煮する「つけオランダ」という別法も存在する。
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産地
煮物の名物

煮あえっこ
下北地方の女性たちが小正月に休みをとって作りおきした、手間ひまかけたおもてなしの煮物。冷害に苦しんだ土地ならではの知恵が詰まった保存食の技法と、人が集まる席にふるまう温かいもてなしの心が息づく。

煮合い
「煮て和える」が語源とされる茨城県下市地方の郷土料理。安産祈願の「子安講」で振る舞われた歴史を持ち、酢を効かせた日持ちする味が特徴。冠婚葬祭で彩りを変えて供される。

煮味噌
八丁味噌を代表とする愛知の豆味噌文化が生んだ「煮味噌」。具材を味噌で煮返すうちに味が染み、翌日さらに美味しくなる「煮返しの楽しみ」が家庭に受け継がれる。

ナメタガレイの煮つけ
仙台の年越しに欠かせない「ナメタガレイ」。黄金色の卵に商売繁盛の縁起をかけ、実は江戸時代の正月の主役はタラだった。

生節とねぎの煮もの
室町時代、翁の面と共に空から降ってきた伝説の「結崎ネブカ」を使う、奈良の奥深き家庭料理。海なき奈良が育んだ生節の旨味と、甘み豊かなねぎの絶妙な組み合わせである。

味噌煮込みうどん
徳川家康の居城・岡崎城から八丁先で生まれた八丁味噌が決め手。土鍋で煮込むことで食べ始めと終わりで麺の食感が変化するのも楽しみの一つ。
石川県の名物

なすそうめん
「なすのそうめんかぶし」とも呼ばれる金沢の夏の知恵料理。そうめんとなすを煮こんだ煮物で、麺より煮物という独特の食感が特徴。奥能登のそうめん産地の歴史が、食べ残した麺の再利用から生まれた。

にしんの昆布まき
北前船が運んだ北海道のニシンと昆布が出会い、能登の祝いの味になった。青柏祭の祝い唄にも登場する、海運の歴史が詰まった保存食である。

押しずし
「おけらずし」という愛称も持つ、金沢の祭りを彩る押しずし。木枠に酢飯と旬の魚を重ね一晩寝かせることで、互いの旨味が調和する。春はタイやアジ、秋はサバやシイラと季節ごとに魚が変わるのも特徴である。

なまこの酢の物
8世紀の木簡に記された能登の名産。平城宮跡出土の文書に「能登からなまこ6斤を都へ」とあり、延喜式にも記録が残る歴史ある冬の味覚である。

みたま
火事を連想させる赤飯に代わり、白山市美川の建前引き出物として定着した黒豆おこわ。江戸時代から続く「おかえり祭り」でも振る舞われる、黒と白の縁起物である。

めった汁
「やたらめったら」具を入れる名の由来が語り継がれる、石川県の具だくさん豚汁。文豪・徳田秋声の小説『黴』にも登場し、明治から親しまれてきた郷土の味である。