
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
くじらの赤身や腹肉、舌などを切り昆布、大根、人参、こんにゃくとともに醤油・みりん・砂糖で煮込んだ煮物である。味は甘辛く、くじらのだし汁が野菜に染み渡る。主な伝承地域は高知県全域で、特に捕鯨の発祥地である室戸市を中心とした土佐湾沿岸に根付いている。太平洋を回遊するくじらが土佐湾を横切る地形が、300年以上続く捕鯨文化を生み、山間部でも「コロ」と呼ばれる乾燥くじらが流通するほど身近な食材だった。年越しの大晦日に必ず食べる習慣があり、「大物になるように」という願いを込めた縁起物として親しまれてきた。家庭によっては越知町の伝統野菜である大平かぶを加えるなど、地域ごとの工夫が見られ、現代でも年越し料理として受け継がれている。
由来・歴史
高知県の年越し食文化を象徴する料理で、「暮れの煮物」という名は年の暮れに食べることに由来する。くじらを食べるのは「大物になるように」という縁起担ぎであり、大晦日が近づくと魚屋にくじらが並ぶのが恒例の光景だった。土佐湾での捕鯨は室戸市を中心に江戸時代初期に始まり、昭和11年(1936年)まで300年以上続いた。土佐捕鯨発祥の地として知られる室戸市では、鯨組と呼ばれる漁業集団が回遊時期を見計らって捕鯨を行い、周辺地域にくじら料理文化を広めた。
食べ方
まずくじらを鍋で煮てアクをこまめに取り、肉が硬くならないよう頃合いを見て取り出す。くじらのだし汁に醤油、みりん、砂糖を加え、下ゆでした大根、人参、こんにゃくを煮てから、仕上げにくじら肉と糸昆布を加える。年越しの大晦日に縁起物として食べるのが定番で、捕鯨地域では日常的な食事としても親しまれていた。くじらは刺身や竜田揚げ、ハリハリ鍋など多様な調理法があり、越知町では大平かぶと煮る食べ方も伝わっている。
オンラインで買う
ふるさと納税で取り寄せる
産地
煮物の名物

黒豆煮
「黒く日焼けするほどマメに働けるように」という願いが込められた、丹波の黒大豆を使ったおせちの定番。大粒で艶やかな黒光りが特徴で、生産者の間では「苦労豆」とも呼ばれる貴重な食材である。

車麩の煮物
ドーナツ型の独特な形状が名の由来。室町時代に中国から伝来し、北前船で新潟に渡った加工技術が生んだ、一週間近くかけて仕上げる手間ひまのかかる伝統食材である。

くつぞこの煮つけ
「くつぞこ」の名は、扁平なシタビラメの姿が靴底に似ていることに由来する。有明海の泥質の海底に生息するこの魚は、表皮の色で「クロシタ」「アカシタ」と呼び分けられ、古くから庶民の惣菜魚として親しまれてきた。

くきたち干しの煮物
生命力旺盛なアブラナ科野菜「くきたち」を春に天日干しし、冬の貴重な保存食として蓄えてきた郷土料理。干す際に軽く揉むことが美味しさの秘訣である。

こうなごのくぎ煮
錆びた釘に似た細長い姿から「くぎ煮」と名付けられた三重県の佃煮。伊勢湾の春の風物詩として親しまれてきたが、資源保護のため近年は禁漁となり、回復を待つ状態にある。

鯉のうま煮
「来い、こい」という縁起の良さから、山形の祝いの席に欠かせない一品。1802年、上杉鷹山公が米沢でコイ養殖を奨励したことが始まりで、厳しい冬の寒さで身が引き締まった「米沢鯉」は牛やりんごと並ぶ名産となった。
高知県の名物

きゅうりと川エビの煮物
柴漬け漁で獲る手長エビと、全長30cmに達する地這きゅうりを煮合わせた夏の逸品。漁師が始めたとされるこの料理は、片栗粉でとろみをつけて冷やして食べるのが高知流である。

蒸し鯛
高知の祝いの象徴「蒸し鯛」は、セイロのすみにさつまいもを入れ、串が刺さるまで蒸すという独自の火加減技術が伝わる。婚礼や「おきゃく」に欠かせない、タイの姿蒸しの祝い料理である。

ねぎとさつまいものぬた
イカの代わりにさつまいもを使った酢味噌和え。高知県南国市の生産者が自家製の芋で考案し、ねぎの辛味と甘みのコントラストが特徴の郷土料理。

こうし飯
年越しに欠かせない高知県大月町の「こうし飯」。「越しめし」が訛って生まれた名前の由来と、厳寒の海で採れる「めのり」の風味が特徴だ。

こんちん
歯ごたえがクセになる大豊町の郷土菓子「こんちん」。ささがきごぼうをふんだんに混ぜた小麦粉生地を焼き上げ、昔は麻の実、今はえごまが香りを添える。山あいの農家が米のとれない時期に中力粉を主食とした暮らしから生まれた素朴な味である。

こぶずし
昆布で酢飯を巻く高知の巻きずし。県中央部は白い板昆布、西部は黒い煮昆布と、同じ名で対照的な二つの姿を持つ。芯の具材がないのも特徴で、冠婚葬祭のハレの日に客をもてなした。