
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
春に収穫したくきたちを4〜5日天日干しした「くきたち干し」を主材とする炒り煮である。醤油と砂糖で味付けし、打ち豆や糸こんにゃく、油揚げなどと共に煮込む。主に米沢市を中心とした置賜・村山地域に伝承され、山形県の内陸部における冬の厳しい気候下で、葉物野菜が入手困難な期間の食糧確保という知恵が結実した料理である。本来は冬の食糧として作られていたが、現在も直売所でくきたち干しが販売され、家庭菜園での栽培も継続されている。具材には特に決まりがなく、旬の野菜や家庭の好みでアレンジされる。
由来・歴史
くきたちはアブラナ科の野菜で、芯を摘んでも側枝が次々と伸びる旺盛な生命力を持つ。春の収穫期に採れたくきたちをゆでて4〜5日天日干しし、あみ袋に入れて保管することで、葉物が得られない冬の貴重な食糧としていた。干す際に少し揉むことが美味しく仕上げるコツとして伝えられている。葉の形状の異なる複数のアブラナ科野菜が「くきたち」の名で呼ばれ、いずれも干物にできる。
食べ方
くきたち干しをたっぷりの水で一晩浸けて戻し、3cmほどに切って油揚げやこんにゃくと炒め、醤油・砂糖で炒り煮にする。仕上げにごま油を加えると風味が増す。打ち豆は大豆を湿らせて木づちでつぶしたもので、水戻し不要で一緒に煮ると旨味が染み出る。ごはんのおかずとして冬に多く食べられるが、具材は旬の野菜など家庭ごとに自由に組み合わせる。
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産地
煮物の名物

暮れの煮物
「大物になるように」という願いを込め、高知県で年越しに欠かさず食べられる縁起物。くじら肉と切り昆布、大根などを煮込み、室戸市の300年続く捕鯨文化が育んだ味である。

黒豆煮
「黒く日焼けするほどマメに働けるように」という願いが込められた、丹波の黒大豆を使ったおせちの定番。大粒で艶やかな黒光りが特徴で、生産者の間では「苦労豆」とも呼ばれる貴重な食材である。

車麩の煮物
ドーナツ型の独特な形状が名の由来。室町時代に中国から伝来し、北前船で新潟に渡った加工技術が生んだ、一週間近くかけて仕上げる手間ひまのかかる伝統食材である。

こうなごのくぎ煮
錆びた釘に似た細長い姿から「くぎ煮」と名付けられた三重県の佃煮。伊勢湾の春の風物詩として親しまれてきたが、資源保護のため近年は禁漁となり、回復を待つ状態にある。

小鮒の甘露煮
生きたまま鍋に入れるという荒技が特徴の「小鮒の甘露煮」。跳ねる小フナを素早く蓋で押さえ込む、佐久の母親たちの技が光る秋の味覚である。
山形県の名物

鱒のあんかけ
冷たく甘いあんかけが特徴の春のごちそう。江戸時代に北前船で伝わった西日本の技法が、庄内のサクラマスと出会って生まれたハレの日の定番料理である。

孟宗汁
直木賞作家・藤沢周平が「毎年5月になると思い出す季節の味」と語った、鶴岡市の初夏を告ける名物料理。朝採りの孟宗筍と酒粕のコクが特徴の汁物である。

納豆汁
糸を引かない納豆を「納豆汁」に仕立てたという山形の知恵。すり鉢で粒が見えなくなるまで潰した納豆のとろみが、冬の体を芯から温める。

くじら餅
「久しく持つ良い餅」が転じた名前の通り、江戸時代から300年続く保存食。新庄藩の兵糧食が起源とされ、桃の節句の雛菓子として今も親しまれる。

鯉のうま煮
「来い、こい」という縁起の良さから、山形の祝いの席に欠かせない一品。1802年、上杉鷹山公が米沢でコイ養殖を奨励したことが始まりで、厳しい冬の寒さで身が引き締まった「米沢鯉」は牛やりんごと並ぶ名産となった。

からかい煮
「十把一絡げ」の「からげ」が訛って「からかい」となったエイのヒレ煮込み。海のない山形の内陸部で、正月やお盆のハレの日に赤飯と並ぶ特別な行事食として重んじられてきた。