
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
佐久市の「小鮒の甘露煮」は、5cm前後の小フナを醤油と砂糖で甘辛く炊いた郷土料理である。骨まで柔らかく煮込まれ、丸ごと食べられる。長野県東部の佐久市は群馬県境に位置し、千曲川水系のきれいな水源に恵まれ、田んぼでフナを育てる「水田養鮒」が盛んな土地である。秋の収穫期に新米とともに食べられ、小フナの僅かな苦みに季節の訪れを感じる。家庭によっては生きたまま調理する伝統的な手法を守りつつ、現代ではスーパーマーケットや学校給食にも出荷され、恒例の「フナ祭り」では2日間で約1200kgを完売する人気ぶりである。
由来・歴史
佐久市ではかつて水田転作の進展に伴い、コイより手がかからないフナの養殖が広まった。海に接しない信州は千曲川、木曽川、天竜川など豊かな水源に恵まれ、川魚を甘露煮にする食文化が根付いた。丸ごと食べられる川魚の甘露煮はカルシウムが豊富で、昔は貴重なたんぱく源でもあった。佐久の「コイの甘露煮」や諏訪湖の「ワカサギの甘露煮」とともに、信州の郷土料理として親しまれている。
食べ方
生きた小フナを水を何度も換えて洗い、跳ねて飛び出さぬよう急いで蓋をして鍋に入れる。焦げ付かないよう鍋のそばを離れず、骨まで柔らかくなるまで炊く。ほかほかの新米とともに食べ、僅かな苦みを楽しむ。秋の収穫期に食べられ、ごはんのおかずや酒のつまみとして親しまれる。
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産地
煮物の名物

鯉のうま煮
「来い、こい」という縁起の良さから、山形の祝いの席に欠かせない一品。1802年、上杉鷹山公が米沢でコイ養殖を奨励したことが始まりで、厳しい冬の寒さで身が引き締まった「米沢鯉」は牛やりんごと並ぶ名産となった。

こうなごのくぎ煮
錆びた釘に似た細長い姿から「くぎ煮」と名付けられた三重県の佃煮。伊勢湾の春の風物詩として親しまれてきたが、資源保護のため近年は禁漁となり、回復を待つ状態にある。

くきたち干しの煮物
生命力旺盛なアブラナ科野菜「くきたち」を春に天日干しし、冬の貴重な保存食として蓄えてきた郷土料理。干す際に軽く揉むことが美味しさの秘訣である。

小あゆの山椒煮
琵琶湖産の小アユを甘辛く炊き上げた佃煮。体長7cmにしか成長しない小アユは、餌の関係で琵琶湖独自の生態を持つ。1998年には滋賀県選択無形民俗文化財に選定された湖魚の佃煮の代表である。

カスベの煮付け
「煮ても焼いても食べれない“かす”にしかならない魚」という蔑称から名づけられたカスベは、今や冬の北海道を代表する煮付けに。骨まで食べられる軟骨魚で、冷めると煮こごりになるのも特徴である。

からかい煮
「十把一絡げ」の「からげ」が訛って「からかい」となったエイのヒレ煮込み。海のない山形の内陸部で、正月やお盆のハレの日に赤飯と並ぶ特別な行事食として重んじられてきた。
長野県の名物

鯉こく
1746年に伊勢神宮の神官を招いて振る舞ったことが正月の食習慣となった「鯉こく」。清流・千曲川で3〜4年かけて育てた「佐久鯉」を味噌で煮込み、一年の健康を願う佐久地域の伝統料理である。

こねつけ
戦国武将・真田幸村が出陣前に腹ごしらえしたと伝わる郷土料理。米が貴重だった時代、小麦粉を混ぜて焼き上げた携行食が、今はおやつとして親しまれている。

にらせんべい
米が貴重だった山間部で生まれた「粉もの」の知恵。にらを混ぜた小麦粉の生地を薄く焼き、味噌だれや醤油だれをたっぷりつけて食べる、長野・北信の素朴な味。

いなごの佃煮
漢字で「稲子」と書くいなごは、稲刈りとともに収穫される秋の味覚。伊那谷では9〜10月、手拭いの袋を腰に下げて飛び跳ねるいなごを捕まえ、甘露煮や佃煮にして食べる伝統が残る。

いもなます
江戸時代から続く飯山の隠れた名物。豪雪で野菜が入手困難だった北信の知恵が、じゃがいもを酢で締めたシャキシャキの味わいに結実した。池波正太郎の小説にも登場する歴史ある一皿。

ほう葉巻
木曽地域の端午の節句に欠かせない「ほう葉巻」は、平安末期に木曽義仲の兵糧として生まれたと伝わる。柏餅の代わりに朴の葉を使う独自の風習が、標高の高い土地ならではの知恵である。