
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
くじらの皮を熱湯で油抜きし、大根・ごぼう・しいたけとともに醤油で炒めた具を炊きたてのごはんに混ぜる炊き込みごはんである。島根県西部の石見地方、浜田市・益田市などの日本海沿岸で伝承されており、浜田市は戦後の沖合底びき網漁業・旋網漁業で山陰の中核漁場として発展、益田市はアワビ・ヒラメの稚魚放流など「つくり育てる」漁業を推進する漁業都市である。節分の日に食べられ、立春を迎えても厳寒が続くこの時期にくじらの油が体を温める。家庭によっては混ぜ込みではなく米と一緒に炊き込む方式もあり、冷凍くじらを自然解凍して調理する現代の食卓にも受け継がれている。
由来・歴史
昭和初期、雪深い石見地方では家々でくじらの皮を大量に買い込み塩漬けにする習慣があり、くじら食文化が深く根付いていた。巨大なくじらにあやかり、子どもたちが「将来、大物になる」ことを祈って節分に食べる伝統が生まれた。浜田市は平成2年(1990年)のピーク時に約20万トンを水揚げするなど、戦後の漁業発展とともにこの食文化が継承されてきた。
食べ方
くじらの皮に熱湯をかけて油を落とし、小さく刻んで大根・ごぼう・しいたけと炒め、醤油で味付けした具を炊きたてごはんに混ぜる。混ぜ込みのほか、具と米を一緒に炊き込む方式もある。節分に食べられ、立春を迎えても寒さが厳しい時期にくじらの油が体を温める。冷凍品を使用する際は冷蔵室で自然解凍し、火の通りが早いため加熱しすぎに注意する。
オンラインで買う
ふるさと納税で取り寄せる
産地
ご飯ものの名物

まぜ飯
祭りと祝いの日の熊本のごちそう「具飯(ぐめし)」。六嘉神社の秋の例大祭では馬肉入りを各家庭で炊き、親戚や隣人に振る舞う。豆腐が"びりんびりん"と鳴る「びりん飯」も仲間だ。

奈良茶飯
東大寺「お水取り」の練行衆に捧げられた神聖な食事が、江戸時代に浅草で大ブームを巻き起こした。旅人が持ち帰った奈良発祥の茶飯は、十返舎一九の「東海道中膝栗毛」でも名を馳せた。

黄飯と黄飯かやく
小豆代わりにくちなしで染めた山吹色のごはん。財政難の臼杵藩で贅沢を避けて生まれた知恵の一品で、武家の「黄飯」と商人の「かやく」が組み合わさる。

こうし飯
年越しに欠かせない高知県大月町の「こうし飯」。「越しめし」が訛って生まれた名前の由来と、厳寒の海で採れる「めのり」の風味が特徴だ。

きじ肉と切り干し大根の混ぜご飯
国鳥に指定されるほど高貴なキジの肉と、瀬戸内の陽光で干した大根を合わせた混ぜご飯。里山の恵みと海の幸が織りなす、愛媛の伝統的な味である。

鶏飯
薩摩藩の役人をもてなすために考案された、奄美群島の知恵と技が詰まった郷土料理。鶏を余すことなく使い、鶏ガラのコク深いスープをかけてさらさらと頂く。
島根県の名物

黒田せりとほうれんそうのおひたし
北大路魯山人が「日本一」と絶賛した島根県松江市の黒田せりは、江戸時代から続く厳寒期の水田栽培で育まれた貴重な郷土野菜。ほうれんそうとのおひたしは、シャキシャキとした歯ごたえと香りを楽しむ冬の定番家庭料理である。

隠岐アラメの炒め煮
「デコボコと荒い表面」が名前の由来となった隠岐のアラメは、漁師が「箱めがね」を装着して海中から刈り取る伝統的な漁法で獲られる。春の新芽を乾燥保存し、炒め煮や白和えなど一年中親しまれる海の恵みである。

笹巻き
熊笹の芯棒が串代わりになる手軽な食べ方が特徴。旧暦端午の節句に男の子の成長を祈り、島根の家庭で一家総出で作られる伝統の米粉菓子である。

鯉の糸造り
鎌倉時代から明治時代まで天皇・将軍の御前料理だった鯉の糸造り。宍道湖の大鯉を糸状に切り、真子をまぶす松江の冬の郷土料理で、四条流の伝統を今に伝える。

かしわ餅
柏の葉が自生しない島根では、トゲのある「猿取り茨」の葉を巻いて作る。端午の節句や田植え後の「泥落とし」で農家の女性たちがせっせと蒸した、香り高い郷土の味。

角ずし/箱ずし
江戸の奥方が懐かしんだ味が石見に根付いた押しずし。具が隠れる「角ずし」と切り分ける「箱ずし」があり、嫁入り道具の木枠が代々受け継がれる。