
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
鯉の糸造りは、宍道湖の大鯉を三枚におろし、細長い糸状に切った刺身に煎ったコイの卵(真子)をまぶした料理である。淡白な身と卵の香ばしさが調和し、煎り酒をつけて味わう。主に島根県松江市で伝承され、城下町として栄えた土地の食文化を反映している。12月から3月の寒い時期、特に産卵を迎える4〜5月にかけて食べられ、かつては祝いの席や産婦の滋養食として珍重された。家庭ごとに煎り酒の配合や真子の代用(数の子・炒り卵)などの工夫が見られ、現代では食生活の変化により提供機会は減少しているが、四条流の伝統料理として松江市の冬の味覚として残っている。
由来・歴史
鯉の糸造りは、鎌倉時代から明治時代まで天皇や将軍が召し上がった御前料理であり、平安時代から続く日本料理の流派「四条流」からつくり方の伝習を受けたとされる。宍道湖は塩分が薄く淡水魚のコイも多く漁獲され、20kgに近い大物も存在した。松江市の城下町としての歴史とともに発展し、現在は冬の郷土料理として親しまれている。
食べ方
コイを三枚におろし、腹骨や隠し骨を取り除いて縦に切れ目を入れ、横に薄くすくうように糸状に切る。塩もみして水洗いしたコイの卵を鍋で煎り、刺身にまぶして提供する。真子が入手できない場合は数の子や炒り卵で代用することもある。タレである「煎り酒」は、本来は濃厚な甘みの「地伝酒」を用いたが、現在は酒・みりん・醤油・塩・煎り米・焼き梅などを調合して再現する。12月から3月の寒い時期に食べられ、産卵期の4〜5月は特に美味とされる。
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産地
島根県の名物

くじらご飯
節分に「大物くじら」にあやかり、子どもの成長を祈る石見の郷土料理。くじらの皮を油抜きして炊き込む、冬の滋味豊かな一膳である。

黒田せりとほうれんそうのおひたし
北大路魯山人が「日本一」と絶賛した島根県松江市の黒田せりは、江戸時代から続く厳寒期の水田栽培で育まれた貴重な郷土野菜。ほうれんそうとのおひたしは、シャキシャキとした歯ごたえと香りを楽しむ冬の定番家庭料理である。

隠岐アラメの炒め煮
「デコボコと荒い表面」が名前の由来となった隠岐のアラメは、漁師が「箱めがね」を装着して海中から刈り取る伝統的な漁法で獲られる。春の新芽を乾燥保存し、炒め煮や白和えなど一年中親しまれる海の恵みである。

かしわ餅
柏の葉が自生しない島根では、トゲのある「猿取り茨」の葉を巻いて作る。端午の節句や田植え後の「泥落とし」で農家の女性たちがせっせと蒸した、香り高い郷土の味。

角ずし/箱ずし
江戸の奥方が懐かしんだ味が石見に根付いた押しずし。具が隠れる「角ずし」と切り分ける「箱ずし」があり、嫁入り道具の木枠が代々受け継がれる。

柿なます
出雲大社の「打ち出の小鎚」に似た形で「こづち」と呼ばれる西条柿を、干し柿にして酢の物に仕立てた一品。紅白の彩りが祝宴を彩る島根の知恵。