
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
いとこ汁は、柔らかくゆでた小豆と豆腐を昆布やしいたけの出汁で煮込み、味噌で味付けした精進料理の汁物である。石川県は「真宗王国」と呼ばれるほど浄土真宗が浸透した土地で、宗祖・親鸞聖人の好物であった小豆を中心に、豆腐や根菜類を加えて煮込む。報恩講(11月28日)のお斎として寺院や檀家に集まった人々に振る舞われ、親鸞聖人への御恩を報じる機会に食べられてきた。能登島では「小豆汁」とも呼ばれ、地域によっては大根やごぼう、芋などの根菜を「いとこ」とする解釈もあり、家庭ごとのバリエーションが見られる。現代でも報恩講が伝統行事として根づく石川県では、精進料理としての位置づけを保ちつつ、郷土の味として親しまれている。
由来・歴史
いとこ汁は、浄土真宗の宗祖・親鸞聖人の忌日にあたる11月28日に行われる報恩講のお斎として発展した。親鸞聖人の好物であった小豆を用い、法会に参加した人々が御恩を報じる食事として供された。名前の由来は諸説あり、旧暦12月8日の正月準備「御事始」に食べられた「おこと汁」が転じた説、あるいは小豆と豆腐などの材料が「いとこ関係」にあるためとも言われる。能登島では「小豆汁」と呼ばれ、地域や個人によって解釈が異なる。
食べ方
柔らかくゆでた小豆をだし汁に入れて火にかけ、煮立ったら豆腐を加え味噌で味を調える。精進料理であるため、出汁は昆布やしいたけなど植物性のものを用いる。報恩講(11月28日)のお斎として食べられるほか、同じく小豆と根菜類を煮込んだ「いとこ煮」や7日間かけてごぼうを炊いた「七日炊きごぼう」なども報恩講の食卓に並ぶ。
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産地
汁物の名物

いわしのだんご汁
イワシのすり身を味噌で味付けただんごを、具沢山の汁に浮かべる北総・九十九里の冬の定番。海の米と謳われた地元イワシの栄養を丸ごと味わう、漁師町ならではの知恵料理である。

かぼちゃのだんご汁
日本最古のかぼちゃ「三毛門かぼちゃ」を丸ごと煮込む、戦前戦後の貧しい時代を生き抜いた命のスープ。トロトロの甘みと小麦粉だんごの素朴な味わいが特徴である。

かに巻き汁
カニを丸ごとすりつぶして味噌汁にするという驚きの調理法。臼と杵で砕いた「山太郎ガニ」が、おぼろ豆腐のようにふわふわと浮かぶ北郷町の秋の味覚である。

冷や汁
上杉謙信の陣中料理とも伝わる米沢の「冷や汁」は、実は汁物ではなく冷たいだしに季節の野菜を浸したおひたし。大鉢から小鉢に盛り分ける本来の供し方が、城下町の食文化を今に伝える。

冷やし汁みそ仕立て
きゅうり、青じそ、みょうがを刻んで冷たい味噌の汁に――暑さで食欲が落ちる夏も、さらさら食べられる新潟・中越の一杯。そのまま汁物でも、ごはんや麺にかけてもいい。

冷や汁
素焼きの魚を炙った味噌でとった汁を冷やして麦飯にかける、宮崎の知恵の食。農民が夏の重労働で時間のない時に栄養補給として食べた即席かけ汁が原点である。
石川県の名物

じぶ煮
「じぶじぶ煮る」擬声語から名付けられた説もある加賀の名物料理。鴨肉に小麦粉をまぶして煮ることで、寒い冬でも体の芯から温まるとろみ汁が特徴である。

かぶらずし
「かぶらずしがないと正月が始まらない」と地元民が語る、石川県の発酵食文化の結晶。高級寒ブリをかぶらで挟み、糀甘酒で熟成させる「なれずし」の傑作で、江戸時代から正月の行事食として親しまれてきた。

加賀太きゅうりのあんかけ
果重600gを超える巨大きゅうりを丸ごと煮込む、金沢の夏の風物詩。昭和11年に東北から伝来した短太系きゅうりが、長年の自然交雑で現在の丸みを帯びた緑色の姿へと変化した。

いしる鍋
「魚汁(うおしる)」が訛って生まれたという能登の魚醤「いしる」を使う鍋。スルメイカの内臓を数年熟成させた独特の香りと旨味が、冬の食卓を彩る。

いさざの卵とじ
「春告げ魚」と呼ばれるイサザを、生きたまま丸ごと卵とじにする能登の旬の味。透き通った小魚が踊るような姿から「踊り食い」も有名だが、身が大きくなる春先には卵とじが定番となる。

ひねずし
「すしの元祖」と呼ばれる奥能登の発酵食品。桶の中身は食べる直前まで確認できないという、運命の一瞬をともにする郷土料理である。