
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
ごま味噌をベースとした鍋に、いのぶたの肉と地元産の白菜・えのき・生しいたけ・しめじ・春菊などの野菜やきのこを加えて煮込む鍋料理である。山梨県は森林が8割を占める山国で、特に笛吹川上流の三富地域は古くから狩猟が盛んだった。冷蔵・冷凍技術の発達により、かつては冬季に限られていた鍋料理が通年楽しめるようになった。飼育期間が豚より長く神経質な性格の管理や交配のタイミングなど手間がかかるため、生産者ごとに技術の差が出やすい。現代では低脂肪・高タンパクの健康志向からも注目され、地元の名物料理として定着している。
由来・歴史
山梨県・三富地域は古来より狩猟が盛んな土地で、猪を常食とする文化があった。戦後、雄の猪と雌の豚を交配させた「いのぶた」の飼育が奨励され、地域の新たな特産として育成が進んだ。獣臭がなく柔らかな赤身が特徴のこの肉は、ごま味噌鍋の形で地元に根付き、ジビエ文化と畜産技術が融合した独自の食文化を生み出した。
食べ方
鍋でごま味噌汁を煮立て、いのぶた肉を投入して火を通した後、白菜・えのき・生しいたけ・しめじ・春菊などの野菜やきのこを加えながら煮て食べる。冷蔵・冷凍設備の整備により、かつては冬季の暖身料理だったものが、現在は年中味わえるようになった。
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産地
鍋料理の名物

石狩鍋
サケ皮のコラーゲンがたっぷり溶け出す、漁師のご褒美鍋。大漁を祝う石狩の地びき網漁で生まれた味噌仕立ての鍋料理は、観光客の口コミで全国に名を轟かせた。

いしる鍋
「魚汁(うおしる)」が訛って生まれたという能登の魚醤「いしる」を使う鍋。スルメイカの内臓を数年熟成させた独特の香りと旨味が、冬の食卓を彩る。

とうへい鍋
捨てられていたクロアナゴを漁師が鍋にしたのが始まり。骨まで味噌スープに溶かし込む、宗像市大島にだけ残る希少なハレの日の伝統鍋である。

べか鍋
「今日も食べっか」「明日も食べっか」という庶民の会話が名前の由来となった鍋料理。ぬか漬けのイワシと酒粕を合わせ、能登の寒い冬を乗り切ってきた発酵の知恵が詰まっている。

飛鳥鍋
飛鳥時代に唐から伝わった乳製品が起源。奈良の貴族から僧侶、そして庶民へと広がった、牛乳仕立ての鶏鍋。ヤギの乳を使った時代もあったという変遷が興味深い。

美酒鍋
「びしょ鍋」が正式名称だった?酒蔵のまかないから生まれた鍋料理で、杜氏が利き酒に支障のないよう日本酒で仕上げた味付けが特徴。
山梨県の名物

じゃがいもとひじきの煮物
海の幸と山の幸を合わせた開山祝いの一品。富士山信仰の宿坊・御師が100年以上前から振る舞い、今も7月1日の山開きに欠かせない郷土の味である。

かつ丼
山梨県で「かつ丼」と頼むと、卵とじではなく千切りキャベツの上にとんかつが載る丼が出てくる。県外の卵とじタイプは「煮かつ丼」と呼ばれ、まったく別の料理として認識されている。

枯露柿
天日乾燥の際に実を「ころころ」と向きを変えたことで名付けられた「枯露柿」は、甲州の大粒柿を長期間干して白い糖の結晶を吹かせた風味豊かな保存食である。

いもがら入り太巻き寿司
山梨の保存食「いもがら」を甘辛く煮詰め、かんぴょうの代わりに巻き寿司の具にする郷土のごちそう。冠婚葬祭で長く愛される、シャキシャキとした独特の歯ざわりが魅力。

ほうとう
かぼちゃのほうとうは「うまいもんだ」と誰もが知る山梨の味。塩を使わない麺を打ち粉ごと煮込む独特の技法は、嫁入り修行としても受け継がれてきた。

馬刺し
かつて貢馬の国として知られた山梨で、富士山信仰登山の荷揚げに使われた馬から生まれた馬刺しは、生肉を薬味と醤油で味わうシンプルながら奥深い郷土料理で、現代も高栄養価な食材として親しまれている。