
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
季節の野菜を薄切りにし、甘酢と赤唐辛子で漬けた酸味と辛味が特徴の酢の物である。白瓜となすは塩もみし、れんこんやごぼう、きくらげ、人参、早煮昆布は下ゆでして歯ごたえを残す。福岡県の博多湾周辺に伝わり、貿易港として異国文化を受け入れてきた土地の食文化を色濃く反映している。お盆の供え物や客もてなしに欠かせず、縁起を担いで具材を奇数で揃える習わしがあった。現代では家庭ごとに具材の組み合わせが変わり、常備菜として日常の食卓にも定着している。
由来・歴史
「阿茶羅漬け」と表記される名称は、ポルトガル語で野菜や果物の漬物を指す「achar(アチャール)」に由来するとされる。安土桃山時代から江戸時代初期の南蛮貿易を通じて博多に伝わったといわれ、同じ時期に日本へ渡来した赤唐辛子が不可欠な味わいを担う。アジア各地で「チャーレ」「オチョール」など類似の発音が漬物を指す一方、「あちら=南蛮風」という解釈もあり、由来は複数の説が併存する。
食べ方
白瓜となすは薄切りにして塩もみし、他の具材は薄切りで下ゆでして冷ましておく。甘酢に赤唐辛子を加えた調味液を具材にかぶせ、味が馴染むまで静置してから盛り付ける。古くはお盆の供えと客もてなしの席に供され、現在は冷蔵保存が利く常備菜として通年食べられている。
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産地
漬物の名物

赤かぶらの酢漬け
戦に敗れた平家の落人が「赤色」のかぶらを後世に残したいと願い、800年以上前から福井市美山地域で伝承された「河内赤かぶら」。酢漬けにすると皮の色が反応して中まで真っ赤に染まり、見た目の美しさと保存性から代表的な郷土料理となった。

赤ど漬け
「阿蘇の馬刺し」と呼ばれる鮮やかな赤色の漬物は、里芋の茎を塩と酢で漬けたもの。中秋の名月に収穫されたものほど色が美しく出るとされ、女性たちは漬け方に気を使ったという。

赤かぶの千枚漬け
酢を加えると赤い色素が美しく発色し、単調な冬の食卓を彩る津軽の伝統漬物。雪に包まれる厳寒期にじっくり漬け込まれたまろやかな味わいは、昔から冬の野菜不足を補う大切な保存食であった。

わかめの醤油漬け
早春に獲れる萩市のわかめを醤油でもみ込み生で食べる保存食。瀬やグリと呼ばれる海底の岩礁が生む栄養豊かな海で育ったわかめの、香りと歯応えをそのまま味わう。

広島菜漬けのおにぎり/広島菜むすび
江戸時代に参勤交代で京都から種子を持ち帰ったのが始まりとされる「広島菜」。その浅漬けをおにぎりに巻いた庶民の味は、かき船の食事から戦後の贈答品へと価値を変えながら、今も県民の日常に溶け込む。

ママカリの酢漬け
「ご飯を借りに行くほどおいしい」という語源を持つママカリを、酢に漬けて骨まで食べる岡山の伝統保存食。漬かるほどに骨が軟らかくなり、尾びれまで丸ごと味わえる。
福岡県の名物

あまぎのかわたけ
江戸時代に将軍へ献上された福岡県朝倉市の幻の天然淡水海苔。水質悪化で絶滅危惧種となり、現在は黄金川の保全活動とともに守られている貴重な食材である。

べたもち
舌平目「ベタ」の扁平な形にちなんで名付けられた福岡の小麦粉菓子。田植え終了の感謝祭「さなぼり」に欠かせない伝統の味である。

えびざっこ
「ざっこ」とは漁で獲れる雑多な小型エビの総称。豊前海の漁師が新鮮なうちにさっと煮るごちそうとして親しまれ、甘醤油の煮汁でそうめんを食べるのが地元流である。

あぶってかも
「あぶって噛もう」から名付けられた福岡の珍味。小骨だらけのスズメダイを丸ごと焼き、鱗の香ばしさと肝のほろ苦さを酒の肴にする、玄界灘の漁師の知恵が詰まった一皿。

エツの南蛮漬け
有明海・筑後川にのみ生息する「幻の魚」エツを、年に一度の解禁期に南蛮漬けに仕立てる福岡の夏の味。銀鱗を振って息絶える儚さが「美人薄命」の異名の由来である。

ふなやき
「ふな」とは舟のこと。底面が湾曲した大きな鉄鍋で焼き、半分に折ると舟のような形になることから名付けられた。黒砂糖を包めばおやつ、高菜漬けを挟めば軽食と、一つの生地で甘辛両方を楽しめる筑後の知恵がある。