
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
生のわかめに醤油をもみ込みアクを取り除いたシンプルな漬物である。塩蔵の場合は水で塩抜きしてから同様に調理し、ご飯のおともや酒のつまみに供される。主な伝承地域は山口県萩市・長門市で、萩湾の「瀬」や「グリ」と呼ばれる海底岩礁が生む複雑な海流が栄養を運び、プランクトンを育てて質の高いわかめをもたらす。早春の水揚げ期に家庭で作られ、日々の食卓に並ぶ日常の保存食として親しまれてきた。家庭ごとに醤油の量やもみ込み方に違いがあり、現代でも手軽な郷土料理として受け継がれている。
由来・歴史
山口県は全国11位のわかめ水揚げ量を誇り、萩市では早春に良質なわかめが獲れる。萩湾の海底にある「瀬」「グリ」と呼ばれる岩礁が海流を乱し、栄養豊かな砂泥を巻き上げる地形が、プランクトンと海藻の生育に適していた。この豊かな海の恵みを長く保存するため、醤油でもみ込む簡便な加工法が生まれた。わかめむすびと並んで、家庭の知恵として定着した。
食べ方
生わかめはよく洗い、塩蔵わかめは水で塩抜きしてから醤油を適量もみ込む。アクを取り除いたそのままをご飯のおかずや酒のつまみとして食べる。早春の水揚げ期に作られ、日々の食卓に並ぶ家庭料理である。
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産地
漬物の名物

あちゃら漬け
南蛮貿易がもたらした異国の風を孕む漬物。ポルトガル語「achar」が名の由来とされ、赤唐辛子の辛味が爽やかな甘酢と絶妙に響き合う。冷蔵なき時代の夏の保存食として博多の台所に根付いた。

赤かぶらの酢漬け
戦に敗れた平家の落人が「赤色」のかぶらを後世に残したいと願い、800年以上前から福井市美山地域で伝承された「河内赤かぶら」。酢漬けにすると皮の色が反応して中まで真っ赤に染まり、見た目の美しさと保存性から代表的な郷土料理となった。

赤ど漬け
「阿蘇の馬刺し」と呼ばれる鮮やかな赤色の漬物は、里芋の茎を塩と酢で漬けたもの。中秋の名月に収穫されたものほど色が美しく出るとされ、女性たちは漬け方に気を使ったという。

広島菜漬けのおにぎり/広島菜むすび
江戸時代に参勤交代で京都から種子を持ち帰ったのが始まりとされる「広島菜」。その浅漬けをおにぎりに巻いた庶民の味は、かき船の食事から戦後の贈答品へと価値を変えながら、今も県民の日常に溶け込む。

ママカリの酢漬け
「ご飯を借りに行くほどおいしい」という語源を持つママカリを、酢に漬けて骨まで食べる岡山の伝統保存食。漬かるほどに骨が軟らかくなり、尾びれまで丸ごと味わえる。

やたら漬け
「やたら野菜を使って、やたらおいしい」が名の由来。半年かけて漬ける兵庫・宍粟の冬の保存食で、季節ごとに収穫した野菜を漬け物桶に次々と加えていく独特の製法が特徴。
山口県の名物

ぐべ汁
「ぐべ」とは「嫁が笠」とも呼ばれる直径2〜3cmのカサガイの仲間で、対馬暖流に恵まれた見島の磯で採れる貴重な食材である。濃厚な磯の風味が堪能できる味噌汁は、島の朝食には欠かせない名物となっている。

お嫁さん団子汁
出産した女性に贈られる「おごうさん」と呼ばれるお嫁さんのための汁物。男の子には繭形、女の子には丸形の団子を入れる風習があり、母乳がよく出るようにとの願いが込められている。

はすいもの酢の物
東南アジア原産のはすいもを生のまま酢で和える山口県萩市の夏の名物。シャリシャリとした食感とアジの脂のりが絶妙にマッチする清涼な逸品である。

けんちょう
長崎けんちぇんとも鎌倉建長寺ともつながる、豆腐と根菜の甘辛煮。下関では貿易の歴史から「建長寺説」が有力視され、何日も煮返すほど味が染みる日常の味である。

くじらの南蛮煮
大晦日や節分に食べる縁起物。クジラの赤身と皮を味噌で煮込み、「大きなものを食べて良い年に」という願いが込められた、下関・長門の鯨文化が生んだ暖かな家庭料理である。

ふぐの唐揚げ
シロサバフグを使った庶民的な一品。高級イメージのふぐを、居酒屋や家庭で気軽に味わえるサクサクの唐揚げに仕立てた山口ならではの食文化である。