
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
ぐべ汁は、カサガイの仲間である「ぐべ」を主材とした味噌仕立ての汁物である。直径2〜3cmの小さな貝から出る濃厚な出汁と、磯の香り豊かな身が特徴で、白味噌で味付けしワカメを添えて供される。山口県日本海側に浮かぶ見島で水揚げされるこの貝は、対馬暖流の影響で多彩な魚介が集まる同島の海の幸を代表する食材である。漁師の家庭はもとより、沿岸部に近い農村でも昔から親しまれ、島の宿の朝食には必ず大きな椀に山盛りで登場する。本来はぐべのみで作るが、近年は資源減少によりカメノテやニイナなど別の貝を加えることも多く、家庭ごとの工夫が見られる。
由来・歴史
見島は本土から約45km離れた人口1000人に満たない島で、かつて大陸交易の要衝として防人が置かれ、独自の文化を育んできた。「ぐべ」は沿岸部の磯や防波堤に付着する貝で、「嫁が笠(ヨメガカサ)」とも呼ばれる。大井・越ヶ浜・須佐では「べべ」と呼称され「べべ汁」としても知られる。渡り鳥の中継地点として知られる同島で、古くから漁師や農家の食卓を支えてきた郷土料理である。
食べ方
ぐべは水でよく洗い、沸騰した湯に入れて少し煮立たせる。白味噌で味を整え、塩気が足りなければ塩を加える。最後にワカメを入れて仕上げるが、ワカメを入れずぐべのみで作ることも多い。近年はぐべが貴重品となっているため、カメノテやニイナなどの小型巻貝を混ぜて調理することもある。家庭料理として日常的に食され、見島の宿の朝食では必ず提供される郷土の味である。
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産地
汁物の名物

そば米雑炊/そば米汁
源平合戦で敗れた平家が祖谷に伝えたという、そばの実を丸ごと使った稀有な雑炊。ふくらんだそば米が主食となり、野菜や肉とともに煮込む栄養満点の一品である。

伊勢エビの味噌汁
出荷できなくなった「あがり」と呼ばれる伊勢エビを惜しみなく使う、徳島の漁師家庭に伝わる贅沢な味噌汁。高級食材を豪快にぶつ切りにして、身とだしを余すところなく味わう。

たかきび団子汁
高さ3メートルに育つ「たかきび」を、収穫から精白まで長い手間をかけて粉にし、団子汁にする。寒い季節、家族で囲炉裏を囲みながら食べる、岡山県西部の伝統的な味。

手延べ素麺のばち汁
三味線の撥に似た形から名づけられた「ばち」は、そうめんの端っこ部分でコシが強いのが特徴。ゆでずに鍋に入れる手軽さから、浅口市鴨方町の家庭で冬の日常食として親しまれている。

ちょぼ汁
子どもの健やかな成長を願い、産後の母へ贈られる淡路島の伝統料理。女の子にはへこませた団子、男の子にはとがらせた団子を入れる命名の工夫も独特である。
山口県の名物

お嫁さん団子汁
出産した女性に贈られる「おごうさん」と呼ばれるお嫁さんのための汁物。男の子には繭形、女の子には丸形の団子を入れる風習があり、母乳がよく出るようにとの願いが込められている。

はすいもの酢の物
東南アジア原産のはすいもを生のまま酢で和える山口県萩市の夏の名物。シャリシャリとした食感とアジの脂のりが絶妙にマッチする清涼な逸品である。

うに飯
高価なウニを「炊き込みご飯」にして振舞う萩のもてなし料理。生ウニをのせる丼とは異なり、米と一緒に炊くことで磯の香りとコクがご飯全体に染み渡る。

わかめの醤油漬け
早春に獲れる萩市のわかめを醤油でもみ込み生で食べる保存食。瀬やグリと呼ばれる海底の岩礁が生む栄養豊かな海で育ったわかめの、香りと歯応えをそのまま味わう。

けんちょう
長崎けんちぇんとも鎌倉建長寺ともつながる、豆腐と根菜の甘辛煮。下関では貿易の歴史から「建長寺説」が有力視され、何日も煮返すほど味が染みる日常の味である。

くじらの南蛮煮
大晦日や節分に食べる縁起物。クジラの赤身と皮を味噌で煮込み、「大きなものを食べて良い年に」という願いが込められた、下関・長門の鯨文化が生んだ暖かな家庭料理である。