
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
醤油や砂糖で甘めに煮た金時豆と、こんにゃく・ちくわ・にんじん・ごぼうなどの具材を酢飯に混ぜ合わせる散らし寿司風の料理である。徳島県はもともと米の育ちにくい土壌であったため、米の量を増やすために多様な具材を加える工夫が生まれた。お祭りや節句などの祝い事に供され、客に振る舞ったり手土産としたりするほか、陰暦10月の亥の日に食べる「いのこずし」として農作物とともに神前に供える習慣もある。使用する具材は地域や季節によって異なり、春にはぜんまいやわらび、たけのこ、ふき、そらまめなどの山菜を加え、南部では金時豆の代わりに落花生を用いることもある。ゆずの皮やごまによる風味付け、すだちやゆこうなどのかんきつ酢を使った合わせ酢など、各家庭の個性が光る一品となっている。
由来・歴史
徳島は米の育ちにくい土壌であったため、米の代わりにさまざまな具材をたっぷり加えて量を増やそうとしたことがこの料理の始まりといわれる。呼び名も「ばら寿司」のほか「まぜくり」「五目ずし」「かきまぜ」「おすもじ」など地域によって多様である。なお、徳島では金時豆がなじみ深く、「豆天玉」や「れんぶ(でんぶ)」など他の郷土料理にも活用されている。
食べ方
だし、砂糖、醤油で煮たこんにゃくやちくわ、にんじん、ごぼうなどの具材と甘煮にした金時豆を、すだちや柚子酢、ゆこう酢などのかんきつ酢で味付けした酢飯に混ぜ合わせて作る。春の節句には山菜やたけのこ、ふき、そらまめを加え、地域によっては干し大根や干しなすを入れることもある。お祭りや節句に供され、亥の日には「いのこずし」として神前に供え、升に八分目まで盛って翌年の豊作を願う。客に振る舞う際は卵を加えるが、日常では使用せず自家栽培の野菜を活用するのが一般的である。
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産地
寿司の名物

ボウゼの姿寿司
秋祭りの行事食として、魚の形をそのまま残す「姿寿司」は徳島ならではの見事な技。かつて高級魚とされたボウゼを使い、背開きにした身ですし飯を包む。

押し寿司
割った瞬間に色とりどりの煮物が顔を出す「押し寿司」は、徳島県海陽町・牟岐町のサプライズ郷土料理。白いごはんの中に隠された具材のコントラストが、祝い事を華やかに彩る。

須古ずし
500年以上前、領民が領主への感謝を込めて献上した「須古ずし」。ムツゴロウのかば焼きを贅沢にのせた箱ずしは、今も佐賀県白石町のお祝い事に欠かせない名物である。

岩国寿司
「殿様寿司」の異名を持つ岩国の押し寿司は、江戸時代に岩国藩主・吉川公に献上されて喜ばれたと伝わる。錦帯橋の街・岩国の城下町文化が生んだ、3〜5段に重ねた華やかな祝い料理である。

うの花きずし/唐ずし
おからをシャリ代わりに使う山口県北部の独特な寿司。イワシを酢で締めて巻きつけ、価格が安く保存にも利く庶民の知恵が詰まった名物である。

えび粉/巻き寿司
「えび粉」はアカエビの殻をむいて叩き、甘く炒りつけた広島の寿司種。包丁で細かくするかすり鉢で擦るかで家庭ごとの違いがあり、巻き寿司の彩りと甘みを担う。
徳島県の名物

うちがえ雑煮
餅の代わりに硬い豆腐を重ねる、祖谷地方の個性派雑煮。岩豆腐が武士の刀を「打ち違え」たように見えることから名付けられた。

ならえ
「奈良漬け」が訛って生まれた名前を持つ、徳島の七色精進料理。甘酸っぱい三杯酢で和えた野菜たちは、物資が乏しかった時代の子どもたちにとって特別なおやつのような存在だった。

ゆべし
「木頭ゆず」の皮を砂糖と醤油で煮詰めた保存食。甘辛い味わいは酒のつまみやお茶漬けの具にもなる。砂糖が貴重だった時代は贅沢品として秋から春の副菜として重宝された。

いり飯/いりこ飯
「いり(いりこ)」はちりめんのこと。100年以上続く徳島の郷土料理は、昔はちりめんのみのシンプルな混ぜご飯として親しまれ、今は具材を加えたバリエーション豊かな逸品に発展した。

そば米雑炊/そば米汁
源平合戦で敗れた平家が祖谷に伝えたという、そばの実を丸ごと使った稀有な雑炊。ふくらんだそば米が主食となり、野菜や肉とともに煮込む栄養満点の一品である。

おみいさん
「おみいさん」は、みそを「みい」と呼んだ時代の敬称が名前の由来。米が貴重だった徳島で、小米や冷や飯を使い野菜をたっぷり加えた腹持ちの良いみそ雑炊として親しまれてきた。