
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
鱈汁は、鱈とネギを味噌ベースの汁で煮た鍋料理である。具はシンプルながら一匹まるごと入れることで、身だけでなくアラ・肝・白子から濃厚なだしが出る。低脂肪高タンパクでビタミン・ミネラル豊富な鱈の栄養を余すところなく摂取できる。主な伝承地域は秋田県で、特ににかほ市金浦山神社周辺の漁村に根付く。日本海に面したこの土地では、2月前後に産卵のため浅瀬に上がってくる鱈が冬を代表する魚として親しまれてきた。1月下旬から3月の寒鱈の最盛期、特に立春前後の鱈祭りでみんなで食べる風習があり、漁師の労をねぎらい豊漁を祝う場面で欠かせない。家庭によっては白子を余らせて湯通しし、しょうが醤油で別途食べるアレンジも見られ、現代でも秋田の冬の定番として受け継がれている。
由来・歴史
鱈汁の背景には、元禄年間以来300年以上続く伝統行事「掛魚(かけよ)祭り」がある。にかほ市金浦山神社で毎年立春の2月4日に行われるこの神事は、漁師が海の安全と豊漁を願い、荒縄で吊るした大鱈を担いで約2キロの道のりを進み、氏神様と恵比寿様に供えるものである。この全国的にも珍しい奇祭で神に捧げられた鱈を、人々が味噌汁で分け合う習いが生まれた。
食べ方
具は鱈とネギのみとし、味噌と酒でシンプルに味付けする。一匹まるごと入れることで濃厚なだしが出るのが特徴で、身はもちろんアラ・肝・白子すべてを楽しむ。白子(だだみ)が余った場合は湯通ししてしょうが醤油で食べるのも一般的である。時期は1~3月の寒鱈の最盛期で、特に立春前後の鱈祭りでみんなで囲む機会が多い。
オンラインで買う
ふるさと納税で取り寄せる
産地
汁物の名物

きゃのっこ汁/けの汁
正月の行事を終えた1月15日から食べる「きゃのっこ汁」。青森・津軽の「けの汁」が秋田に伝わり、青豆粉の焼きずんだを入れるのは秋田ならではの特徴である。

納豆汁
後三年の役で生まれた納豆が、秋田県南の正月を彩る。すり潰した納豆を味噌汁に溶かし込み、山菜やきのことともに冬の寒さをしのぐ。

いものこ汁
里芋の子孫芋「いものこ」を主役に、鶏肉や秋の味覚をふんだんに入れた秋田の鍋料理。横手市では270年の栽培歴を誇る里芋が、独特の粘りと柔らかな歯ごたえを生み出す。

ぬっぺい汁/八杯汁
「八杯」の名は「一丁の豆腐で八杯分できる」または「おかわりが止まらない」という説がある。岩手県央では「八杯豆腐」とも呼ばれ、冠婚葬祭の精進料理として親しまれてきた。

まめぶ汁
「忠実忠実しく健康で」と願いを込めた名前の由来を持つ、くるみ入り団子が特徴の汁物。江戸時代の凶作を乗り越えた知恵が、今も岩手・久慈の冬を温める。

けんちん汁
小正月に女性を休ませるため大量に作り、温めなおして食べた知恵の汁物。岩手では豆腐を油で炒めてそぼろ状にし、気仙地方では椿油の香りが特徴である。
秋田県の名物

とんぶりの長芋和え
「畑のキャビア」と称されるとんぶりは、唐ぶりこ(ハタハタの卵)に似ることから名付けられた。大館市の伝統技法で作られる緑色の小粒を、長芋と和えて食す秋田の郷土料理である。

なすの花ずし
紫色のなすに黄色の菊、赤とうがらしを重ねた華やかな漬け物。秋田の漬け物の芸術品と呼ばれ、正月の食卓を彩る。

ハタハタ寿し
雷光の古語「霹靂神」にちなむ名を持つハタハタを、米どころ秋田の麹と米飯で発酵させた伝統の鮨。大みそかや正月のお供えに欠かせない、県民生活に深く根づいた味である。

じゅんさい鍋
沼に縄のように生える「ヌナワ(沼縄)」と呼ばれた水草が、箱舟で手摘みされる三種町の夏の風物詩。鶏肉との相性抜群の鍋料理として、現代では「夏の鍋」として親しまれている。

かまぶく
魚のすり身を使わない「かまぼこ」が秋田の山間部に生まれた。じゃがいもと餅粉で作るもちもちの口取り菓子で、お祝い事に欠かせない一品である。

鱈の子炒り
子宝祈願の縁起物として秋田の正月に欠かせない「鱈の子炒り」。真鱈の卵を糸こんにゃくとネギで炒りつけ、産地・由利地域ではシンプルに鱈子本来の風味を楽しむ。