
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
小麦粉に水を加えてこね、薄くのばした生地を手でちぎって鶏肉・ごぼう・にんじん・きのこなどと共に煮込む汁物である。コシのある食感が特徴で、醤油味が基本だが味付けは地域や家庭で異なる。主な伝承地域は北上川流域の県央地域を中心とした県内全域で、平坦な水田地帯でありながら寒さによる冷害リスクがあったため、米に代わる大麦・小麦・そばの生産が盛んで「しとねもの」文化が発達した。季節を問わず食されるが、特に寒い冬に喜ばれ、農作業の手伝いで人が集まった際のもてなしや、現在も地域行事で振る舞われる。具材は三陸沿岸ならサンマ、内陸なら川ガニや川魚、岩泉町では松茸など産地により多様で、近年はカレー味や洋風・中華風などアレンジも広がっている。
由来・歴史
県央地域は古くから米の生産規模が大きかったが、寒さによる冷害で米が取れない年もあったため、食生活を安定させるために大麦・小麦・そばの生産も行われていた。この背景から米粉・小麦粉・そば粉を活用する「しとねもの」文化が発達し、ひっつみはその代表である。米が不作な年には主食の替わりとして多く食された。名前は「手でちぎる」の方言「ひっつまむ」が転じたもので、地域によって「とってなげ」「はっと」「きりばっと」とも呼ばれる。
食べ方
小麦粉に水を加えてこね、しっかり寝かせてコシを出した生地を薄くのばし、手でちぎって鶏肉・根菜・きのこなどの入った出汁で煮込む。具材は地域や季節により異なり、三陸沿岸ではサンマ、内陸では川ガニ・川魚、岩泉町では松茸を入れることもある。味付けは醤油が基本だが、小豆やずんだで甘くする「小豆ひっつみ」「ずんだひっつみ」もあり、近年はカレー味や洋風・中華風など多様なアレンジが楽しまれている。年間を通じて食されるが、特に寒い冬に好まれ、農作業の手伝いで人が集まった際や現在の地域行事でも振る舞われる。
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産地
汁物の名物

さんまのすり身汁
本州一のさんま漁獲量を誇る岩手県で、60年ほど前から生まれた新しい郷土料理。すり鉢でよくしたさんまのすり身を団子にし、ふわっとした食感が汁に溶け込む素朴な味わいが特徴である。

どんこ汁
三陸沿岸で獲れるエゾイソアイナメの「どんこ」を使った味噌汁。肝の濃厚な脂と淡泊な白身が特徴で、産後の体力回復や恵比寿講の縁起物として重宝されてきた。

けんちん汁
小正月に女性を休ませるため大量に作り、温めなおして食べた知恵の汁物。岩手では豆腐を油で炒めてそぼろ状にし、気仙地方では椿油の香りが特徴である。

まめぶ汁
「忠実忠実しく健康で」と願いを込めた名前の由来を持つ、くるみ入り団子が特徴の汁物。江戸時代の凶作を乗り越えた知恵が、今も岩手・久慈の冬を温める。

ぬっぺい汁/八杯汁
「八杯」の名は「一丁の豆腐で八杯分できる」または「おかわりが止まらない」という説がある。岩手県央では「八杯豆腐」とも呼ばれ、冠婚葬祭の精進料理として親しまれてきた。
岩手県の名物

煮しめ
身欠きにしんやぜんまい一本煮など、内陸と沿岸で具材が異なる岩手の「煮しめ」。冠婚葬祭や正月に欠かせない集まりの味である。

お茶もち
軍配うちわに似た形から「うちわ餅」がなまって「お茶もち」と呼ばれるようになった。うるち米粉の団子にくるみだれを塗して焼く、盛岡市民に長く愛される餅菓子である。

氷頭なます
鮭の頭の軟骨「氷頭」を酢でしめた正月の珍味。一匹からわずかしか取れない貴重な部位は、平安時代から朝廷に奉納されるほど古くから食されてきた。

いもの子汁
秋の北上川流域で「芋煮会」「いもの子会」と呼ばれる集いの中心となる汁物。皮をこそぐようにむいた「二子さといも」のみで作る地域もあり、さといも本来の味わいを楽しむ食文化が残る。

へっちょこだんご/うきうきだんご
「へっちょこ」の名は、1年の農作業で「へっちょ(苦労)」した自分をねぎらう意味に由来する。煮えるとだんごが浮き上がる様子から「うきうきだんご」とも呼ばれる。

かまもち
半月状の形が鎌に似ることから名付けられた、岩手県の小麦粉菓子。味噌と黒砂糖、くるみのあんを包み、農作業の小昼に気軽に食べられてきた。地域により「ひゅうず」「かまだんご」など呼び名が異なる。