
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
もち米粉とうるち米粉を熱湯でこねて蒸し、すりこぎでついた後に小判型に伸ばしてあんを包み、かしわの葉で挟む餅菓子である。福井県小浜市から若狭町上中域にかけて15集落で作られ、もち米の産地として知られる若狭地方の気候風土に根ざしている。5月半ばから7月上旬にかけて各集落で行われる「田の神祭り」「休ん業」などの休みの日に、子ども神輿が巡行する家々で田の神への供え物として欠かせない。「半夏生」「野上り」「泥落とし」など呼び名は集落ごとに異なり、親類間での配り物としても重んじられてきた。かしわの葉の抗菌・防腐作用を活かした保存性の高さと、子孫繁栄の象徴として現代も祭りの核を担う存在である。
由来・歴史
田植えの無事終了を祝う子ども主役の「田の神祭り」に欠かせない供え物として発展した。かしわの葉は枯れても木から落ちにくい特性から「木の神様に守られている」と信じられ、子孫繁栄の縁起物とされた。この信仰と葉の抗菌・防腐作用が、長期保存を要する農耕社会の祭礼食として柏餅を定着させた。
食べ方
もち米粉とうるち米粉を熱湯でこね、耳たぶほどの軟らかさにして適度な大きさにちぎり、蒸し器で15〜20分蒸す。すりこぎでよくついた後、小判型に薄く伸ばしてあんを包み、2つに折ってまわりを押さえ、かしわの葉で包む。5月半ばから7月上旬にかけての「田の神祭り」「五月やすみ」「休ん業」など各集落の祭りの日に供えられ、子ども神輿の巡行がない村でも「半夏生」などの休みに親類へ配られる。
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産地
餅の名物

かしわ餅
柏の葉が自生しない島根では、トゲのある「猿取り茨」の葉を巻いて作る。端午の節句や田植え後の「泥落とし」で農家の女性たちがせっせと蒸した、香り高い郷土の味。

きび餅・あわ餅・とち餅
丹波・丹後の山間部で、米が足りない時代に主食代わりに食べられてきた雑穀餅。きび・あわ・とちの実を使った素朴な味わいが、近年は健康食として再び注目されている。

きんかもち
高価な黒砂糖を使ったことから「金貨餅」と名付けられた南部地方の変わり種の郷土料理。半月型の小麦粉の皮に、くるみと味噌・黒砂糖の餡が包まれる。

かしゃもち
厄除けのよもぎと黒糖を練り込み、香りの葉「かしゃ」(クマタケラン)で包んだ奄美の餅菓子。仲の良い二人を「餅とカシャのようだ」とたとえるほど、島の暮らしに寄り添ってきた。

かき餅
旧暦の正月についた餅を一か月以上干し、油で揚げて食べる千葉の伝統菓子。芯が残らずふっくら膨らむ食感が特徴で、一年間保存できる実用的な知恵が詰まっている。

重箱入りぼたもち/おはぎ
「みつめのぼたもち」と呼ばれる出産祝いの名物。ぼたもちを丸めるのではなく、もち米ごはんとあんこを重箱に敷き詰め、好きな量だけ取り分けて食べる独特のスタイルが特徴である。
福井県の名物

昆布巻き/棒巻き
「よろこぶ」という縁起の良い名前で呼ばれる昆布巻きは、北前船が運んだ昆布とニシンの出合いが生んだ福井の祝い料理。輪切りにして円満を願い、秋祭りや正月に欠かせない。

丸焼き鯖
鯖街道で京都に運ばれた若狭のサバを、竹串に刺して丸ごと焼く豪快な郷土料理。大野市では殿様が領民に配った「半夏生」の風習が今も残る。

なまぐさ汁
「生臭い」という名に反し、鯖の丸焼きからとる上品なすまし汁。若狭・小浜の新保地域だけに伝わる、精進明けや祝い事の象徴的な一椀。

ほうばめし
田植えのお祝い「さつきあげ」にふるまわれた、ほう葉の香りがきな粉ご飯にしみ込む携行食。熱々のご飯で葉の色が変わるほど馴染ませるのがコツである。

ほんこさん/報恩講料理
親鸞聖人の好物だった小豆を使った「おつぼ」など、浄土真宗の報恩講で供される精進料理が福井県の家庭料理として定着。秋から新年にかけて地域の女性たちが心を込めて作る「ふるさとの味」である。

へしこ
「圧しこむ」という漁師の作業から名付けられた、塩と糠で半年熟成させたサバの発酵保存食。京都「鯖街道」の起点・若狭で生まれ、現代ではアンチョビ代わりの洋風調理まで幅広く愛される。