
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
出雲そばは、玄そばを殻ごと挽き込む「挽きぐるみ」製法により、黒みがかった色調と豊かな香りを持つ麺料理である。島根県出雲地方を中心に生産され、やせた山畑でも栽培可能なそばの実が、奥出雲の農業と深く結びついてきた。冷たい「割子そば」と温かい「釜揚げそば」の二種類があり、旧暦10月の「神在祭」では神社周辺で新そばが振る舞われる。家庭や店舗によってつゆの濃さや薬味の使い方に違いがあり、現代では通年流通するが秋の新そばが旬として特に珍重されている。
由来・歴史
出雲そばの広まりは、江戸時代初期に松江藩初代藩主・松平直政公が信州松本藩から移封した際、そば職人を連れてきたことに始まるとされる。岩手県の「わんこそば」、長野県の「戸隠そば」と並び日本三大そばの一つに数えられる。製法上の特徴は、そば粉を選別せず玄そばを丸ごと挽く「挽きぐるみ」にあり、これが黒みがかった色と高い栄養価を生んでいる。
食べ方
冷たい「割子そば」は円柱状の丸い重箱に入った麺に、土瓶入りのつゆを直接かけて食べる。江戸時代の城下町で四角い重箱に入れて携帯していたことに由来し、洗いやすさから丸い形状に変化した。温かい「釜揚げそば」は出雲大社周辺発祥で、ゆで上がった麺を水洗いせずそのまま器に盛り、とろみのついたそば湯と薬味をかける。神在祭の屋台で提供されるほか、秋の新そばの季節に特に食される。いずれも自分でつゆの量を調節するスタイルが共通する。
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産地
そばの名物

ニシン蕎麦
濃口醤油で甘辛く煮た身欠きニシンをのせる北海道のニシン蕎麦。京都とは対照的な味わいで、江差町の網元「横山家」に伝わるレシピがルーツとされる。

おろしそば
「越前おろしそば」の名は昭和天皇のお言葉に由来する。冷たいつゆに大根おろしを添えて食べる、福井県民に最も親しまれるそばのスタイルである。

手打ちそば
「霜下そば」の異名を持つ戸隠そばは、朝霧に守られた標高700mの高冷地で育まれる。一本棒・丸伸ばしという古式の手打ち法と、安曇野産わさびの辛みが織りなす至極の一杯。

へぎそば
織物の道具「へぎ」に盛り付けられる新潟・魚沼発祥の蕎麦。つなぎに布海苔を使うことで生まれるツルツルの食感と、からしを薬味にする独特の食べ方が特徴である。

馬肉蕎麦
「肉そば」と言えば馬肉だった熊本の食文化。戦後の食糧難で軍馬の肉を使ったことから広まり、今ではカレーにも使われるほどポピュラーな食材となった。

沖縄そば
そば粉を使わないのに「そば」と呼ばれる沖縄の国民食。1976年の商標登録を巡る闘いの末、10月17日は「沖縄そばの日」として定着した。
島根県の名物

柿なます
出雲大社の「打ち出の小鎚」に似た形で「こづち」と呼ばれる西条柿を、干し柿にして酢の物に仕立てた一品。紅白の彩りが祝宴を彩る島根の知恵。

角ずし/箱ずし
江戸の奥方が懐かしんだ味が石見に根付いた押しずし。具が隠れる「角ずし」と切り分ける「箱ずし」があり、嫁入り道具の木枠が代々受け継がれる。

かしわ餅
柏の葉が自生しない島根では、トゲのある「猿取り茨」の葉を巻いて作る。端午の節句や田植え後の「泥落とし」で農家の女性たちがせっせと蒸した、香り高い郷土の味。

干し大根の煮しめ
石見地方の定番保存食。大根をわらに通して軒先で干し、蒸して再び寒風に晒すという独自の製法で、甘みと旨味が凝縮された干し大根を煮しめる。

へか
農具の「犂(すき)」の先端が鍋になったという、島根県石見地方の個性的な魚介鍋。新鮮な一日漁の獲物を豪快にぶつ切りにして、甘辛い割り下ですき焼き風に味わう。

ふきのとう味噌
春の訪れを告げる山菜を味噌で楽しむ島根の定番保存食。ふきのとうの独特な苦みと香りが、ごはんのおともやお酒のつまみにぴったりである。