
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
はぜ佃煮は、ハゼをたまりで甘辛く煮詰めた佃煮である。三河湾沿岸の遠浅の干潟で獲れたハゼを、豆味噌の搾り液であるたまりで煮ることで、豆味噌を思わせる濃厚なコクと旨味が特徴となる。主な伝承地域は愛知県の知多半島・渥美半島に挟まれた三河湾沿岸で、六条潟や汐川干潟などの豊かな干潟と、渥美半島で盛んなさつまいも栽培が佃煮文化を後押ししてきた。縁起物として正月のおせち料理で食べられ、冬の店頭に並ぶ本ハゼの佃煮が年末の訪れを告げる。家庭では内臓の取り方(川ハゼはそのまま、海ハゼは取り除く)や、実山椒・出汁昆布を使った風味づけに違いがあり、焼きハゼは昆布巻きの芯や雑煮の出汁としても活用される。
由来・歴史
三河湾は遠浅の干潟に恵まれ、沿岸部では古くから魚を長く保存するための佃煮文化が発達した。愛知県の佃煮の特徴は「たまり」の使用であり、これは豆味噌製造の過程でにじみ出た液体が起源とされる。ほぼ大豆のみで作られるたまりは、麦を原料とする一般の醤油とは異なり、豆味噌のような濃厚な味わいを持つ。ハゼは顔が翁に似ることから「長寿」の象徴とされ、泳ぎが速いことから「目標達成」の意味も持ち、おせち料理に欠かせない縁起物として定着した。
食べ方
川ハゼは内臓を取らずそのまま、海ハゼは内臓を取り除いて焼き乾燥させてから、たまりと砂糖で煮詰める。臭みが気になる場合は煮詰める前にお茶で軽くゆでる。出汁昆布を敷いたり実山椒を少量入れたりするなど、風味のアレンジもある。炊き立てのごはんや酒の肴として食べられ、正月のおせち料理で縁起を担ぐほか、9〜11月のハゼ釣りシーズンに獲れたハゼを焼きハゼにして保存し、年末まで楽しむ習慣もある。
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産地
煮物の名物

ひめいちとみかんの辛子煮
「明日は鯛になろう」と名づけられた小魚・ヒメイチを、みかんの皮と辛子で煮込む土佐の知恵料理。骨まで柔らかく食べられる保存食として、年の暮れに欠かせない味である。

干し大根の煮しめ
石見地方の定番保存食。大根をわらに通して軒先で干し、蒸して再び寒風に晒すという独自の製法で、甘みと旨味が凝縮された干し大根を煮しめる。

ひょう干しの煮物/ひょう干し煮
「ひょっといいことがありますように」と願いを込めて正月に食べる縁起物。夏に採ったすべりひゆを天日干しし、糸こんにゃくや油揚げと煮込んだ山形の保存食である。

博多雑煮
串刺しにした具材を椀に盛って出汁を注ぐ、おでんのようなユニークなスタイルが特徴。博多商人の奥方「ごりょんさん」たちが生み出した、忙しい年始の知恵が結実した正月料理である。

淡竹とエンドウの煮物
お弁当のおかずとしてお年寄りに懐かしまれる、高知の春の定番煮物。淡白な淡竹と甘みのあるエンドウが旬の出会いを果たす。

はば雑煮
「1年中幅を利かす」という縁起から、千葉県山武郡の正月に欠かせない「はば雑煮」。房州産の海藻「はばのり」をたっぷりかけ、漁師の間で愛されたご当地食材が華やかな年始の味に昇華した。
愛知県の名物

へぼ飯
クロスズメバチの幼虫「へぼ」を甘辛く煮てごはんに混ぜる愛知県三河地域の郷土料理。かつては山間部の貴重なタンパク源で、今はごちそうとして客に振る舞われる。

いがまんじゅう
桃の節句に三色のもち米をまぶした「いがまんじゅう」は、西三河地域独自の雛祭り行事食。ピンク・黄・緑の色彩が豊作祈願や生命力を象徴し、1月中旬から店頭に並ぶ春の訪れを告げる菓子である。

じょじょきり
ドジョウに似た細い麺を甘い汁で煮た、明治時代から続く渥美半島の農家の間食。「じょじょ」はドジョウのことで、農作業の疲れを砂糖で癒す知恵が詰まった一皿である。

箱ずし
四角い木枠で押し固めた愛知の「切りずし」は、具材を斜めに配置する工夫で皆が平等に味わえるよう配慮された祝いの料理である。かつては贅沢品とされ、木枠を持つ家庭も多かった。

五平餅
木こりや狩人が山の講の前夜に食べた携帯食がルーツ。うるち米を潰して串に刺し、味噌ダレを塗って焼く独特の食べ方は、中部山間部に広がる「御幣」の形にちなんだ名物料理である。

ふろふき大根
曹源寺の「大根炊き」で振る舞われる縁起物。愛知県産の大根をだし汁で煮込み、濃厚な豆味噌の練り味噌をのせた、寒い季節に体を温める郷土料理である。