
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
米と具材を四角い木枠に詰めて上から圧力をかけ、半日ほど置いてからカットして食べる押し寿司である。エビ、アナゴ、干ししいたけ、錦糸卵などを斜めに配置し、酸味のきいたすし飯と共に味わう。尾張地域と西三河地域を中心に愛知県内全域に伝承され、米が貴重だった時代には大量のごはんを使う贅沢な料理として特別な存在であった。祝い事や祭りなど多くの人が集まる場面で作られてきたが、手間がかかることから現代では家庭で作られる機会は減少している。味付けや具材の組み合わせは家庭ごとに異なり、魚介類や山菜、角麩、でんぶなどが使われる。
由来・歴史
「箱ずし」の歴史は握りずしより古く、魚と米と塩を長期漬け込む「なれずし」が起源である。室町時代に短期間熟成の「半なれ」が登場し、すし桶や木枠に魚とごはんを重ねて発酵させる「箱ずし」の原型が誕生した。粕酢の発明により各地で多様な「箱ずし」が生まれた。尾張・西三河の「箱ずし」は「切りずし」とも呼ばれ、具材を斜めに配置するのは皆が平等に味を楽しめるよう配慮したものである。
食べ方
味付けした具材の水気をしっかり切り、すし飯の上に中央から順に斜めに配置する。5段から6段重ねた専用の木枠に詰め、横からくさびを打って圧力をかけ、半日ほど置く。できあがったら箱から取り出し、食べやすい大きさにカットして食べる。かつては「箱ずし」と共に「巻きずし」や「あぶらげずし」も作られ、祝い事や祭りなど多くの人が集まる時季に食べられていた。
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産地
寿司の名物

葉っぱずし
アブラギリの薄紅色の葉で包む、九頭竜川流域の祝いの寿司。箸を使わず葉を剥いて手で食べる独特のスタイルが、祭りやお盆の席に華を添える。

はたごんぼずし
「はたごんぼ」は急斜面の硬い赤土で育ち、直径10cm・長さ1mにもなる橋本市西畑地区の特産ごぼう。輪切りにして中心をくり抜き酢飯を詰めた「はたごんぼずし」は、地元組合が生み出したオリジナルメニューである。

ハタハタ寿司/しろはた寿司
ごはんを使わずおからを詰める珍しい寿司で、鳥取県の賀露神社ホーエンヤ祭で振る舞われてきたごちそう。春に旬を迎えるハタハタの脂の乗った身と、パラパラのおからが織りなす独特の食感が魅力。

五目いなりずし
笠間稲荷神社の参詣客に振る舞われた華やかないなりずし。人参やごぼう、しいたけのほか、常陸秋そばやくるみなど地場産食材を使うのが茨城流。色とりどりの具材が見えるよう、口を上にして並べるのが特徴。

銀ぶろうずし
「不老長寿の豆」と伝わる黒いいんげん豆を酢飯に混ぜた祝宴の鮨。艶やかな見た目から「銀」、長寿祈願から「ぶろう」と名付けられた縁起物である。

太巻ずし
戦後に女性の手で華やかに進化した、断面の図柄を楽しむ上総・下総の祝い寿司。かつては男性の名誉職だった巻き寿司が、家庭のイベントを彩る名物となった。
愛知県の名物

はぜ佃煮
翁に似たハゼの顔が「長寿」の象徴となり、おせち料理に欠かせない一品。三河湾の恵まれた干潟と、豆味噌から生まれた濃厚な「たまり」が、深いコクと旨味の佃煮を育んできた。

へぼ飯
クロスズメバチの幼虫「へぼ」を甘辛く煮てごはんに混ぜる愛知県三河地域の郷土料理。かつては山間部の貴重なタンパク源で、今はごちそうとして客に振る舞われる。

いがまんじゅう
桃の節句に三色のもち米をまぶした「いがまんじゅう」は、西三河地域独自の雛祭り行事食。ピンク・黄・緑の色彩が豊作祈願や生命力を象徴し、1月中旬から店頭に並ぶ春の訪れを告げる菓子である。

五平餅
木こりや狩人が山の講の前夜に食べた携帯食がルーツ。うるち米を潰して串に刺し、味噌ダレを塗って焼く独特の食べ方は、中部山間部に広がる「御幣」の形にちなんだ名物料理である。

ふろふき大根
曹源寺の「大根炊き」で振る舞われる縁起物。愛知県産の大根をだし汁で煮込み、濃厚な豆味噌の練り味噌をのせた、寒い季節に体を温める郷土料理である。

ふな味噌
骨まで柔らかく煮詰めたフナを、愛知の豆味噌で仕上げる保存食。寒ブナの旬を閉じ込めた、木曽三川流域の冬の味覚である。