
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
阿波のいとこ煮は、徳島県で伝承される小豆と干し芋の甘煮である。さつまいもを「ゆで干し」にしてから小豆とともに弱火で炊き、優しい甘みに仕上げる。徳島はかつて多くの家庭で芋を畑栽培しており、保存食として干し芋を活用する食文化が根付いていた。冬の空気が澄んで乾燥する時季に作られ、農作業の休憩や子どものおやつとして親しまれてきた。芋の切り方や小豆の量、やわらかさなどが家庭ごとに異なり、個性豊かな味付けが受け継がれている。かつては砂糖なしで作られたが、現在はお茶受けや上等なおやつとしても楽しまれている。
由来・歴史
「いとこ煮」は本来、小豆と野菜の煮物を指す言葉で、かぼちゃなどで作られることが多い。阿波のいとこ煮がさつまいもを使うようになったのは、徳島で芋栽培が盛んで、保存方法として干し芋を活用していたためである。干し芋には「白干し」と「ゆで干し」があり、阿波のいとこ煮では後者を用いる。小豆は古来ハレの日の食材であり、ゆでた芋に小キビなどを混ぜて食べることもあったという。戦時中の砂糖不足の際は無糖で作られたが、後に砂糖が加わり、おかずからお茶受け・おやつへと位置づけが変化した。
食べ方
ゆで干しした干し芋を水で戻し、鍋に小豆と塩少々を加えて弱火で2時間ほど炊き上げる。干し芋は煮るのに時間がかかるため、小豆を別で先に煮ておき後から加えるのがポイントである。冬の乾燥した時期に作られ、保存がきくため大きな鍋にたっぷりと仕込むのが一般的だった。農作業の休憩や子どものおやつとして食べられ、寒い季節に体と心を温める郷土の味として親しまれている。
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産地
煮物の名物

くちぞこの煮付け
靴底の形に似た魚「くちぞこ」を、甘辛く煮含めた有明海沿岸の定番魚料理。夏から秋のふっくらとした身が最高とされ、日常食として親しまれている。

しゃっぱの煮付け
「がねしゃっぱ」とも呼ばれるシャコは、有明海で水揚げされる夏の味覚。醤油で炊くとうまみたっぷりのだしが出る煮付けにされ、煮汁はそうめんの漬け汁としても重宝される。

うちがえ雑煮
餅の代わりに硬い豆腐を重ねる、祖谷地方の個性派雑煮。岩豆腐が武士の刀を「打ち違え」たように見えることから名付けられた。

いとこ煮
「遺徳煮」とも書かれる由緒正しい行事料理。萩では澄んだ汁にシイタケやかまぼこを配した冷たい汁物仕立てとなり、祝い事には紅白玉、仏事には白や緑の団子を入れる。

筍の味噌煮
岩国の春の名産・タケノコを、味噌と砂糖で甘辛く煮詰めた山口の家庭料理。成長が早く旬の短い「幻の春味」を、水煮でも味わえる保存食文化の知恵が詰まっている。
徳島県の名物

鯛めし
鳴門海峡の渦潮にもまれて身が引き締まった「鳴門鯛」を丸のまま米と炊き上げる豪快な郷土料理。鯛の旨味がご飯に染み込み、観光客にも人気が高い。

白味噌雑煮
勝浦では黒砂糖、相生地区では砂糖を入れる徳島の白味噌雑煮。まなというアブラナ科の野菜を加える伝統があり、今は小松菜や春菊で彩り豊かに仕上げる。

包飯
ご飯をそば米雑炊で「包む」という名の由来通り、別々に炊いたそば米雑炊とご飯を混ぜて食べる徳島県西部の郷土料理。米不足の時代に腹持ちを良くするため考案されたアイデア料理である。

島そうめん
れんこ鯛の煮汁をめんつゆ代わりに使う独創的なそうめん。出羽島の漁獲物を余すところなく味わう知恵が詰まっている。

いももち
鳴門市に19世紀後半にさつまいもが伝わった頃から親しまれる餅菓子。砂糖が高級品だった時代、甘くて腹持ちの良いさつまいもが庶民の貴重な甘味として重宝された。

ボウゼの姿寿司
秋祭りの行事食として、魚の形をそのまま残す「姿寿司」は徳島ならではの見事な技。かつて高級魚とされたボウゼを使い、背開きにした身ですし飯を包む。