
写真出典:農林水産省「うちの郷土料理」
紹介
ウグイの産卵期に体に赤い縞が入ったものを「あいそ」と呼び、醤油・砂糖・みりんで3時間ほど弱火で煮詰めた甘露煮である。若干骨っぽいため煮くずれせず骨まで柔らかく仕上げるのが特徴で、ショウガや水飴を加える家庭もある。主な伝承地域は那珂川流域、鬼怒川・思川中流域で、内陸部の栃木県では冷蔵庫普及以前、新鮮な海産物が得にくく、川魚が貴重なたんぱく源として重宝された。食べられるのは主に3〜5月の春先で、産卵のために群れるあいそを小網漁で捕らえ、串刺しにして保存食とすることもあった。家庭ごとに煮込み時間や調味料の配合が異なり、夜2時間煮て翌朝1時間煮るなど工夫が受け継がれるが、日持ちしないため火入れをしながら早めに食べきるのが一般的である。
由来・歴史
「あいそ」とは春の産卵期に赤い縞模様を帯びたウグイの呼称であり、那珂川や鬼怒川などの大きな川筋で春先に群れるものを捕らえて食していた。内陸部の栃木県では冷蔵庫が普及するまで新鮮な海産物が入手困難で、乾物や塩引き鮭が主な蛋白源であったことから、身近な川魚は重要な栄養源となった。現在も産卵しやすい場所作りから始まる伝統的な小網漁が県内に残る。
食べ方
弱火で約3時間煮込み、骨まで柔らかく仕上げる。一気に煮るのではなく、夜2時間ほど煮て火を止め、翌朝1時間ほど煮ると味がよくしみ込む。鍋のふたは開けておくと臭みが抜けやすく、煮始めたら鍋をゆすったり箸を使ったりせずに煮くずれを防ぐ。ショウガやみりん、水飴を加えることもある。日持ちしないため火入れをしながら早めに食べきる。時季は3〜5月で、春先に獲れた小さく柔らかいあいそが最適である。
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産地
煮物の名物

煮しめ
子孫繁栄を願う縁起物・さといもが主役の「芋煮しめ」。縄文時代から続く栃木の古き食文化が、おせちや祭りを彩る。

ニシンとタケノコの煮付け
「田植えにしん」の異名を持つ、栃木の内陸部で育まれた知恵の料理。保存が効く身欠きにしんと旬のたけのこを甘じょっぱく煮詰め、稲作の祭りを彩るご馳走として親しまれてきた。

モロの煮付
海のない栃木県で親しまれる「モロ」は、尿酸を蓄えるサメの特性を活かし内陸部に届いた貴重な海の幸。醤油と砂糖でやわらかく煮付けた家庭の味は、今もスーパーで気軽に手に入る。

鯉の甘露煮
明治時代に士族が始めた養殖が発展し、蚕のさなぎをエサに育てた臭みの少ない鯉を、甘辛く煮込んだ名物料理。一晩寝かせることで味がさらに染み込む。

ぼうたら煮
骨までやわらかく煮込む「ぼうたら煮」は、戻しと煮込みに一週間かかる手間暇を惜しまない、会津の冬の特別な味。正月や祝い事に欠かせない一品である。
栃木県の名物

揚げまき湯波の煮物
日光では「湯葉」を「湯波」と書く。金串ですくい上げた厚みのあるゆばを巻いて揚げ、薄味で煮込んだ、東照宮のお供えにも使われる伝統の味。

ばっとう汁・だんご汁(すいとん)
「ばっとう汁」「はっとう汁」「だんご汁」「とっちゃなぎ」——同一の料理が栃木県内で4種類の異名を持つ。いずれも「法度汁」が訛ったもので、米不足を補う知恵の食である。

かんぴょうのり巻き寿司
全国9割以上を栃木県が占めるかんぴょうを巻いた寿司。江戸時代に滋賀から種が伝来し、壬生を中心に一大産地を築いた歴史ある郷土の味である。

いなりずし
俵型に握った酢飯を油揚げで包み、中央をかんぴょうで結ぶ独特の姿が特徴。全国のかんぴょうのほぼ全てを生産する栃木県ならではの郷土寿司である。

五目飯
日本のかんぴょう生産量の99%以上を占める栃木県が誇る「五目飯」。祭りや農家の休日など特別な日に、色とりどりの具材を炊き込んだハレの日の伝統料理である。

ゆず巻き
だいこんにゆずの皮を巻いた甘酢漬け。宇都宮市北部の寒冷ゆずは肉厚で香り高く、雑煮の後の口直しとして欠かせないお正月の定番である。